幸子「ね!」



響「いきなり押しかけといて何言ってるんだ……」



幸子「だめでしたか?」



響「いや、だめじゃないけど、来るなら連絡くらい欲しいさー」



幸子「おかしいですね。事務所には話を通したんですが」



響「え?」



幸子「響さんの名前を出した途端二つ返事でした。内容も聞かず」



響「……ぴよ子め」







幸子「『あふぅ、好きにしていいよ?』って」



響「なんで美希が出ちゃったの」









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幸子「とにかく、ボクは許可をとってここに来たわけです。響さんの家に」



響「住所まで教えちゃったのか、美希……」



幸子「なぜこんなにカワイイボクが、カンペキな響さんの家に来たか、分かりますか?」



響「え? 相談があるんだろ」



幸子「!」





幸子「さすが」





幸子「カンペキですね」ニヤリ



響「自分で言ってただろ」









幸子「ではカワイイボクはどうして相談相手に響さんを選んだか、分かりますか?」



響「友達がいないからか?」



幸子「怒りますよ」



響「ごめんごめん。冗談だぞ」



幸子「もう」



響「うーん……けど本当に分からないな。なんで自分なんだ?」



幸子「ボクの悩みを解決するのに、響さんが最適だと思ったからです」



響「……」





響「いじめられてるなら、ちゃんと警察に行ったほうがいいぞ……?」



幸子「違います」







幸子「なんでですか。なんでいじめの相談に響さんが最適なんですか。いじめられてるんですか」



響「……」



幸子「えっ……いや、その」



響「実は最近、事務所のみんなが……」



幸子「ま、待って下さい。ボクまだ覚悟できてないです。重い話はまだ」



響「自分のこと、食べようとしてくるんだ……」



幸子「……はい?」



響「出会いがしらに、ほっぺにかじりつかれたり……おへそなめられたり……太ももや二の腕まで、かみついてくるんだ……」



幸子「……まぁボクも、プロデューサーさんには足をなめられたりしますけど……」



響「果ては胸やお尻にまで」



幸子「この話はやめましょう。はいさい、やめやめ」



響「はいさいの使い方違うぞ」









響「あと、脈絡なくキスをせがまれたりするぞ……」



幸子「えぇ……?」



響「キスをされるんじゃないんだ……『キスして?』って頼まれるんだ」



幸子「……」



響「最初は自分も冗談だと思って『どこにキスして欲しい?』とか返してたけど……みんな、ぐいぐい来るんだ……」



幸子「……」



響「ぴよ子が、『頑張った私にキスして!ご褒美のチューして!』なんて言うのは、いつものことだけど……雪歩や伊織、果ては律子まで」



響「『アンタ、みんなにキスしてあげてるって本当? 事務所内ではいいけど、外ではひかえなさいよ? …………ところで、私にもしてくれるのかしら』」



響「なんて言うんだぞ……」



幸子「……」





幸子「うちに移籍しますか……?」



響「……考えとく」









響「あと、物もよくなくなるんだ……」



幸子「え……ちなみに、なにが」



響「くつしたとか……あと、し、下着とか」



幸子「はい、分かりました」







幸子「通報しましょう。今すぐに」ポパピプ



響「そ、それは困るさー!」







幸子「なんでですか。言いましたよね響さん、警察に行ったほうがいいって」



響「自分、事務所のみんなのこと、好きだから……大好きだから!」



響「だから、犯人さがしなんて、したくないし……」





響「それに、みんなで一緒にトップアイドルを目指すって誓ったんだ! 警察なんて呼んでコトになっちゃったら、事務所の全員に迷惑がかかっちゃう。だから」



幸子「…………響さんがいいって言うなら、ボクは介入しませんが……。……本当につらくなったら、ちゃんと言うんですよ?」



響「うん……ありがとう、幸子……」







幸子「って! なんでボクが相談受けてるんですか!! 逆!!!」ガビーン









響「そうだったな。で、なんの相談なんだ?」



幸子「はい、このあいだ一緒に番組に出たじゃないですか」



響「あぁ! あれは楽しかったぞ!」



幸子「えぇ……? ジャングルの奥地に二人で放り出されたのに、ですか?」



響「そりゃ、自分も最初はびっくりしたさー」





響「けど、幸子と一緒だったし。二人で探検できて、とっても楽しかったぞ!」



幸子「ふ、ふふーん! ま、まぁそうですよね。カワイイボクと一緒ならどこでも天国みたいなもんです!」



響「底なし沼に二人ではまったときは、そのまま地獄行きかと思ったけどな」



幸子「カンペキな響さんがいて助かりましたよ。あの場で通りすがりのアナコンダと友達になって引き上げてもらえなければ、どうなっていたことか……」



響「アナるんはとってもいい子だったなー!」



幸子「その名前はやめましょう」



響「な、なんでだ……家族につける名前が変だって言われるから、これでも今風にしようと、頑張って考えたんだぞ……?」



幸子「変なのは、〜美とか〜子の部分じゃないですよ。というかそこが変ならボクはどうなるんですか!!」



響「そ、そっか。幸子はいい名前だよな」



幸子「当たり前です!」フフーン



響「よし、これからは自分のネーミングセンスをちゃんと信じるぞ!」



幸子「それはどうかと……」







幸子「ま、響さんみたいなカッコいい名前にも、憧れないわけじゃないですけどね」



響「そうか?」



幸子「カッコいいじゃないですか。我那覇響! まさにカンペキって感じがします」



響「えへへ……そうかな?」



幸子「そうですよ」



響「ありがと……なんか照れるぞ」///



幸子「画数が多くて、音も力強く、かつスッキリしてますし」



響「幸子の相談は、名前についてなのか?」



幸子「はっ……! い、いえ、違います」



響「?」



幸子「むしろ、その前です」



響「まえ?」



幸子「アナコンダと仲良くなったじゃないですか」



響「うん。アナ子」



幸子「……」



響「……どうしたんだ?」



幸子「いえ、なんでも」







響「ん? じゃあもしかして、幸子は、へび香と仲良くなりたいのか? だから家に」



幸子「あー、間違ってはいないんですが、ちょっと違いますね……」



響「どういうこと?」



幸子「ボクが仲良くなりたいのは、動物全般です」



響「あ……なるほど。だから自分のところに」



幸子「ご理解いただけましたか?」



響「うん。……けど、幸子、動物苦手なのか?」



幸子「いえ、そんなことは……むしろカワイイ子は好きなんですけど……」



響「……?」



幸子「動物が……ボクのことを嫌い、というか」



響「?? ……うーん、幸子は優しいし、動物に嫌われるタイプじゃないと思うんだけど……」



幸子「…………実はですね」











幸子『ふんふふーん♪』ピョンコピョンコ



幸子『おや、あれは』



幸子『カワイイワンちゃんですね! ボクほどではないですが!』



幸子『カワイイボクが撫でてあげますよ!!』スッ





ガブッ





フギャーーーーー!!!











幸子「……と」



響「分かったけど、ピョンコピョンコってなに?」



幸子「ボクがスキップするときの効果音です」



響「あぁ、そう……」



幸子「他にもですね……」











幸子『ふんふふーん♪』ピョンコピョンコ





バサバサバササーッ





幸子『わわわっ! な、なんですか!?』



幸子『ひょわっ!? ボクの肩に鳥さんが!』



幸子『……ボクのカワイイ声に惹かれて来たんでしょうか?』



幸子『一緒に歌いますか?』





(・>『キツツキ』



幸子『……』





コツコツ!コツコツコツ!





フギャァアアーーーーーー!!??











幸子「……」



響「……大丈夫だったか?」



幸子「……すごく、痛かったです」グスッ



響「よしよし……」ナデナデ



幸子「うぅ、響さぁん……」グスグス



響「でも、どうしてそんなことに……」



幸子「他にも、猫さんにあいさつすればネコキックをおなかに喰らったり……」



響「ネコキック……?」



幸子「塀の上からジャンプしての跳び蹴りでした……」



響「……」



幸子「あと、小動物系はみんな、髪のぴょこ毛にぶら下がってきますし……」



響「ぴょこ毛?」



幸子「この横のぴょこんです」ピョコン



響「あぁそれか」



幸子「ゴリラはバナナを投げつけてくるし……アライグマに髪を洗われたアイドルなんてボクぐらいでしょうね……危険だったのはラッコさんでした。ボクのおなかで……ボクのおなかに貝をのせて……石で…………うぅっ」



響「…………た、大変だったんだな……」







幸子「どうしたら、動物さん達はボクを好きになってくれるんでしょうか……」



響「うーん……そうだな…………とりあえず、うちの家族と触れ合ってみる?」



幸子「……大丈夫ですかね」



響「心配ないぞ! みんないい子だし、自分の言うことは聞いてくれるからな!」



幸子「まぁそれなら……」



響「おーい、いぬ美ー!」





いぬ美「バウ」



幸子「でかっ」











幸子「もうちょっと小さいサイズからで……」



響「そうか? じゃあ……うさ江ー!」



うさ江「……」ピョンピョン



幸子「……」ピョンコピョンコ



響「対抗しなくていいから」





響「ほら、こう持って……膝にのっけてみなよ」



幸子「はい……んっしょ……意外と重たいですね」ポスッ





幸子「おぉ、おとなしいです。これなら」ナデナデ



うさ江「……」プリプリ



幸子「……」



響「……」



幸子「うんこされたんですが」



響「……多分、重たいとか言うから」









幸子「ころころしたカワイイうんこで助かりました」



響「ごめんな……片付けまで手伝わせて」



幸子「いいんですよ! ボクが相談に乗ってもらっているわけですし!」



響「じゃあ、どうする? シマ男か、ハム蔵か」



幸子「……いえ。あえて、いぬ美さんで」



響「いいのか?」



幸子「小さい子でこれですので。逆に大きい子の方がおおらかなのでは、と」



響「まぁ、いぬ美は確かにおっとりしてるけどな……」



いぬ美「バウ」



幸子「さぁ行きますよ……! いざ頭をなで」スッ





ばくっ





幸子「」











響「いぬ美は大きいからいいけど、小さい犬を撫でるときは、しゃがんであげるんだぞ? あと、できれば向こうから警戒を解いてくれるまで、手は出さない」



幸子「いえ、あの、噛まれてるんですが」



響「え?」



いぬ美「ばくばく」



幸子「ボクの左手、食べられてるんですが」



響「……」







いぬ美「ばうっ!」





のしっ



幸子「わっ! ……あ、あの、押し倒され」





ペローン





幸子「ひぃっ!?」ビクッ





ペロッ



ペチャ……ジュルッ



幸子「ひぁああっ……だ、だめ、なめちゃ」ピクン



ピチャピチャピチャ



ジュルッ、ペチョ



幸子「ぁ、あっ! や! だめです! そこは! あぅっ」ジタバタ



ピッチャピチャピッチャ



幸子「あっあっ……あーっ! んっ! んんーっ!!」ビクンッ ビクンッ



響「……」



幸子「見てないで助けて下さいよ!!!!」











響「ごめんごめん」



幸子「うぅ……もう全部びちゃびちゃです……お風呂、お借りしても」



響「うん、使っていいぞ。着替えも出しとくから」



幸子「はい……では」ヨロヨロ







響「ん……あれ? 今お風呂場……」





響「確か、ワニ子が…………」









フギャァアァァアアアアアアァア!!!???











幸子「…………」



響「ほんとごめん」



幸子「……頭から」



響「うん……」



幸子「まるかじりですよ。まるかじり」



響「ほんと…………よく言っとくから」



幸子「……いいですけど。生きてますし」







幸子「けど、下着はないんですね……仕方ないですけど。すーすーします」



響「……下着も濡れたのか?」



幸子「全部びちゃびちゃだって言ったじゃないですか。もう」



響「……ま、まぁいいや。でも、分かったぞ」



幸子「? なにがですか?」



響「幸子が、なんで動物に襲われるのか」



幸子「! ほんとですか!?」



響「それはな……」



幸子「……」ゴクリ









響「幸子が、…………動物に好かれてるから、だ」



幸子「…………」



響「それも、とんでもなく、な」



幸子「…………えぇー?」



響「あっ、信じてないな?」



幸子「だって……」



響「うちの雪歩だって、犬嫌いになった原因は犬に好かれすぎて、追っかけられたせいなんだぞ?」



幸子「そうなんですか……」





幸子「でも雪歩さんって、男の人も苦手ですよね」



響「うん? そうだけど」





幸子「つまり、男の人に好かれすぎて、追いかけられたから」



響「はいさい、やめやめ」







幸子「でも、好かれすぎてるから……って」



響「多分みんな、よかれと思ってやってるんだ」



幸子「ありがた迷惑ですね……」









幸子「……まぁでも、それなら仕方ないですね」



響「え? 改善策を探さなくていいのか?」



幸子「好かれているなら、いいです。みんな、カワイイボクへの愛情表現だったんですね」



響「うん、そうだけど」



幸子「一緒ですよ」



響「え?」



幸子「響さんの……事務所のみなさんと」



響「あっ……」



幸子「ボクも、動物さんたちの好意を受け止めてあげることにします。響さんを見習って」



響「あはは! 765のみんなは動物扱いかー?」



幸子「聞いてる限り動物さんの方がマシですよ!」



響「言ったなー!」









ガチャッ





貴音「響、ごはんはまだですか? 響」



響「エサはさっきやっただろ?」



貴音「ですが……」シューン



響「もうちょっと我慢してて」



貴音「はい……!」パァア





響「さて、なんの話だっけ」



幸子「……」





幸子「通報していいですか」



響「だめ」







幸子「動物扱いっていうか…………もう飼ってるじゃないですか!! なんですか! なんで貴音さんが首輪に繋がれて……ペットみたいになってるんですか!!」



響「ただのペットじゃないぞ。自分の家族だ」



幸子「そ う い う 話 じゃ な い で す」









響「いや、実は貴音ったら、自分のごはんまで食べちゃったから、ちょっとオシオキ中なんだ」



幸子「なるほど……それなら。……いや、やっぱりアウトっぽいですよ」



響「それで、自分はへび香のごはんを食べちゃったんだけど」



幸子「友達やめていいですか」



響「待って」









幸子「ん、ところで、そういえばへび香さんを見ませんね」



響「へび香はどこかへお出かけしてるぞ」



幸子「……まずいんじゃないですかね」



響「いや、さすがにへび香だけで行かせたわけじゃないよ。雪歩も一緒」



幸子「えぇ……? 雪歩さん、ヘビは平気なんですか……?」



響「うん。二人は仲良しだから、なんくるないさー」





響「きっと今頃、ガッとやってちゅっと吸ってはぁんだぞ」



幸子「まずいですよ!!」







響「冗談冗談! へび香は人を襲わないさー」



幸子「そうなんでしょうけど……」





ピンポーン



「へび香さんを返しに来ましたー」





響「おっ、噂をすれば。はいさーい! 今あけるぞー!!」タタタッ





ガチャッ





響「えっ」



幸子「あっ……」





へび香「……」



アナコンダ「……」



ニシキヘビ「……」



コブラ「ノックをするべきだったかな」







シャーーーーーッ





うぎゃあああああああああ!!



フギャァアアーーーーーー!!













貴音「!? 何奴!」ガチャッ





へび香たち「……」



貴音「」







はやぁあああああああああ!!















雪歩「みなさんは、他人のごはんを勝手に食べたらだめですよ?」



雪歩「それじゃ私は、気絶した四条さんを回収していきますので……では」





ズリズリズリ……









END