〜起床〜



佐久間まゆ「凛ちゃん、起きて」



渋谷凛「うー……」



まゆ「凛ちゃん」



凛「もう少し寝かせて。あと……」



まゆ「あと五分?」



凛「あと三十分」



まゆ「起きなさいっ」ガバッ



凛「あー、お布団……」



まゆ「ほら、着替えてください。もう朝食出来てるんですからね」



凛「眠い……まゆはなんでそんなに寝起き良いの?」



まゆ「小さい頃からママのお手伝いで朝食作ったりしてたから……でしょうか」



まゆ「逆に凛ちゃんはなんでそんなに寝起き悪いんですかぁ?」



凛「まゆに優しく起こしてもらうため……かな」



まゆ「も、もうっ……さらっとそういうこと言うんですから……」





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〜朝食〜



凛「ねえ、まゆ」



まゆ「はい?」



凛「余ってる野菜を味噌汁に入れるのは良いんだけど、きゅうりは合わないと思うなぁ」



まゆ「冷や汁って知ってます? きゅうり入り味噌汁みたいな」



凛「あー……知ってるけど、味噌が合わないんじゃなくて温かいのが合わないんだよ」



凛「冷や汁だって冷たいでしょ」



まゆ「じゃあ残して良いですよ、私が食べますから」



凛「ごめんね、いつも作ってくれてるのに。……はい、あーん」



まゆ「そのままお椀に残してくれれば……」



凛「良いから良いから。ほら、あーん」



まゆ「あー……ん」モグモグ



まゆ「今までも合わないと思ったものありました?」



凛「うーん、特には。でもそうやって余り物を処理するの主婦って感じがする」



まゆ「うふふ、そう言ってくれると嬉しいです」

凛「おかわり」



まゆ「はい」



まゆ(ニコニコ)



凛「な、なに?」



まゆ「たくさん食べてくれて嬉しいなぁって」



凛「昨日まで絞ってたからね。撮影当日の朝くらいしっかり食べておかないと」



凛「まゆもちゃんと食べないとバテるよ?」



まゆ「そうなんですけどね……ビキニだからお腹出ちゃうんじゃないか心配で」



凛「撮影まで結構時間あるでしょ。それに……」



まゆ「それに?」



凛「お……美味しいから大丈夫だよ」



まゆ「ふふふっ。凛ちゃんがそのセリフを言うなんて」



凛「あーやっぱり言うんじゃなかった、恥ずかしい……」



まゆ「かな子ちゃんのモノマネでもう一回」



凛「無理だよっ」

〜プールでグラビア撮影〜



カシャカシャカシャ……



撮影監督「はいオッケーでーす」



撮影監督「この後は休憩挟んで二人一緒の撮影をします」



撮影監督「特に指示はしないので好きに遊んでください」



凛「こんな感じで、とかないんですか?」



撮影監督「一応コンセプトは楽しく水遊びしてる感じで、ということなんですが」



撮影監督「それなら指示する必要ないでしょ?」



撮影監督「自然な表情撮りたいので、カメラも意識しなくていいです」



まゆ「分かりました」



凛「……丸投げされたの初めてだよ」



まゆ「カメラ目線でキメ顔もいいですけど、自然な表情がほしいときはこんなこともありますよ」



凛「まゆは経験あるんだ? ……そっか、元読者モデルだからね」



まゆ「ええ。でも自由に遊んでって言われても、当時は何をして良いか分からなかったんですよねぇ」



凛「自由なのに?」



まゆ「読モの頃は、仲の良い人が少なくて……つい遠慮してしまって」



まゆ「あっ、いえ、学校にはちゃんとお友達いましたよ?」



まゆ「ただお仕事で一緒になる時間が少なかったからどうしても」



凛「今は?」



まゆ「くす……全く遠慮してません」



まゆ「お仕事どころか、寝たり食べたりも凛ちゃんと一緒ですからね」

まゆ「そうそう、撮影再開前に日焼け止め塗ってくれませんか?」



凛「良いけど、撮影前も塗ったのにマメだね」



まゆ「そろそろ落ちてもおかしくない時間経ってるから……念の為に、ね」



凛「じゃあうつ伏せになって」











撮影スタッフ「監督見てください。渋谷さんが佐久間さんに……日焼け止めですかね」



撮影監督「おっ、いいねー。せっかくだから撮影しておこう。邪魔しないようにね」



撮影スタッフ「一言声かけなくていいんですか?」



撮影監督「自然な表情を撮りたい、と言ってあるから大丈夫。休憩中は撮らないとは言ってない」



撮影スタッフ「うわぁ……」



撮影監督「なによりこんな素晴らしい映像を残さないなんてありえない。彼女らに対する冒涜だよ」



撮影スタッフ「同意します」

撮影監督「終わったようだね……いや待て、まさか前も塗ってあげるのか!?」



撮影スタッフ「普通に考えたら自分で出来ますよね……どんだけ仲良いんですかね」



撮影監督「クソォ、渋谷さんの手のひらになりたい」



撮影スタッフ「激しく同意します」











凛「よし、終わったよ」



まゆ「はぁ……凛ちゃんに全身まさぐられちゃいました」



凛「そういう言い方やめて」



まゆ「今度は私が塗ってあげますね」



凛「あ、うん」



まゆ(うふふ、無防備な背中……なんだかいたずらしたくなっちゃう)



まゆ(ツツツ)



凛「うひっ!? ちょっと、くすぐったいからやめて!」



まゆ「背中は敏感なんですねぇ……ほぉ〜ら、つんつん」



凛「だからやめてってばぁ!」

〜ショッピング〜



凛「何を買うとか決めてるの?」



まゆ「夏物のワンピースと……他に気に入ったものがあれば」



凛「ワンピースは……あった。それにしても……」



まゆ「はい?」



凛「なんというか……すっっごく可愛いデザインだよね。ほとんどにリボンとかレースついてるし」



凛(リボンパーティー……名は体を表す、なブランド名だ)



まゆ「ええ、お気に入りなんですよ。凛ちゃんもなにか選んだらどうですか?」



凛「いや、私は……こんなに女の子っぽくて可愛いのはちょっと恥ずかしいかな」



凛「ステージ衣装は、まあ……そういうものだから良いけど。私服までは……」



凛「まゆなら似合うと思うけどね」



まゆ「凛ちゃんだってきっと似合いますよ。女の子は誰だって可愛くなれるんですから」

凛「私のことはいいからっ。あ、ほら、この蒼いワンピースなんてどう? 涼しげで良いと思うよ」



まゆ「……そうですね。自分の好みで選ぶとつい、ピンクとか赤が多くなってしまうから……」



まゆ「たまには良いかも。ちょっと試着してきます」











まゆ「どう? 変じゃないですか?」



凛「うん、このブランドのデザインがまゆに合ってるのかな。寒色系も結構似合ってるよ」



まゆ「話題を変えるために適当に選んだにしては、ね?」



凛「な、なんのことかな〜」



まゆ「あら、ごまかすんですねぇ」



まゆ「じゃあ凛ちゃんもこれ、試着してもらいましょうか」



凛「なんで!?」



まゆ「うふ、私が着てほしいからです♪」



凛「ええぇ〜……じゃあせめて、もう少し大人しいデザインの」



まゆ「だーめ。さ、早く。それとも私が着替えさせてあげましょうか?」



凛「もう……分かったよ。まゆって結構強引だよね」



まゆ「そうですか?」



凛「Yesって言うまで『そうですよね? ね?』って言って迫るでしょ」



まゆ「迫るだなんて……不安だから確認してるだけなのにぃ」



凛(不安だからやってたんだ……ちょっとスネた顔も可愛い)











凛「……まぁ、悪くないかな」



まゆ「ほら、ね? 凛ちゃんだってこういうの似合うんですよ」



凛「でも普段使いにはちょっと恥ずかしいよ……なんというか、可愛すぎて」



まゆ「じゃあ特別なときに着ればいいじゃないですか」

まゆ「私と色違いでお揃いのワンピース……素敵でしょう?」



凛「んー、でも」



まゆ「リボンパーティーのコピー知ってます?」



凛「キャッチコピー? いや、知らないけど」



まゆ「『恋する女の子を応援する。』なんですよ」



凛「そう、なんだ……」



まゆ「ええ」



凛「これ着たら、応援された気になって……頑張れる?」



まゆ「なりますよ、とっても」



凛「じゃあ買おう……かな」



凛「でも! 私が着るときはまゆもだからね。でないと恥ずかしい」



まゆ「ふふ、はい」



まゆ「せっかくだから可愛い下着も買いますか?」



凛「それはまた今度っ!」



〜TV視聴〜



アクリョウガ イル...!



まゆ「ひっ……!」



凛「今の、そんなに怖いシーンじゃないよね?」



まゆ「冷静に考えたらそうですけど、その……演出が恐怖を煽るというか……」



凛「苦手ならわざわざ見なくても」



まゆ「でもせっかく……小梅ちゃんがおすすめって貸してくれたブルーレイだから……」



凛(なんで受け取ったのかな……)



凛「友達思いなのは良いんだけど――」



オマエノ タマシイヲ ヨコセエエエ!!



まゆ「きゃーーっ!!」ダキッ



凛「ま、まゆっ。苦しいよ」

まゆ「ううぅ……もうお化け出てないですかぁ?」



ウボアー!



凛「いや、絶賛活躍中だね……」



まゆ(ガクガクブルブル)



凛「こんなに怖がりだったっけ?」



まゆ「実は……CDデビューの告知をしていたときに……」



まゆ「聞こえるはずのない声を聞いてしまって、それ以来ですね……」



凛「CDデビューってことは、小梅も一緒だった?」



まゆ「そ、そうなんですよぉ……小梅ちゃんがあの子の声だ、って……」



凛(うーん……)



凛(あの子の声を聞いた → 自分(小梅)と同じ → ホラーも好きなはず)



凛(とでも考えたのかな)



凛(悪気はないんだろうけど、小梅に振り回されてるような……)

凛「仕方ないなぁ、見終わるまで抱きついてていいから。それなら怖くないでしょ」



まゆ「ありがとう……私のほうが年上なのに、ダメダメですね」



凛「年上と言ってもたった一歳差だし」



凛「それに私の方こそ、毎朝起こしてもらったりごはん作ってもらってるし、お互い様だよ」



まゆ「じゃあお風呂も今日は一緒に……だめ?」



凛「どうしようかな……」



まゆ「凛ちゃぁん……」ウルウル



凛(ああもう可愛い)



凛「ほ、ほんの冗談だって。良いよ、もちろん」



〜就寝〜



まゆ「はぁ……」



凛「どうしたの?」



まゆ「いえ、なんでもないです……ただ、早くプロデューサーさんに会いたいなって」



凛「まだ二日目じゃない。出張から帰ってくるのは三日後だよ」



まゆ「分かってますよぅ、ただの愚痴です」



まゆ「ああぁ〜……お仕事なければついて行くのにぃ〜〜」



凛「学校は?」



まゆ「お仕事で休むこと多いし、学校はどうでもいいです」



凛(プロデューサーに会えないあまり、まゆがやさぐれ始めている……)



まゆ「皇族の方々の公務だってたいていはご夫婦一緒じゃないですか」



凛「うん、そこと比べるのおかしいからね」



まゆ「凛ちゃんは寂しくないんですか? 会いたくないんですか?」



凛「そりゃ会いたいよ」



凛「でも会えない時間が長ければ、その分帰ってきたときの嬉しさが大きくなる」

凛「……と思って、必死に気持ちを抑えてる」



まゆ「本当?」



凛「うん、本当」



凛「まゆがプロデューサーを好きなのと同じくらい、私もプロデューサーを好きだよ」



まゆ「……やっぱりそうですよねぇ」



まゆ「そうは見えないから、凛ちゃんは平気なのかって思ってました」



凛「そんなわけないって。私だって、ついて行けるなら行きたいよ」



凛「でもわがまま言って仕事の邪魔しちゃダメでしょ」



凛「帰ってくる家を守って支えてあげなくちゃ」



凛「それが私達、プロデューサーの妻の役目なんだから」



まゆ「そう……ですよね。ありがとう、凛ちゃん」



凛「どういたしまして」











まゆ「お帰りなさい。出張お疲れ様でした」



凛「え、これ? うん、お揃い……まゆと一緒に買ったんだ」



凛「幸子じゃないんだから、そんなに可愛いを連呼しなくていいよ!」



まゆ「うふふ。それでは……あ・な・た」



まゆ「ごはんにします?」



凛「お風呂にする?」



まゆ・凛『それとも、わ・た・し・た・ち?』



おわり