冬 某大学







結衣「は〜は〜寒い季節になってきたね、ヒッキー」



八幡「まあな、俺は早く帰って温まりたい」



結衣「もう…大学2年になっても相変わらずだし」





八幡「俺に変な期待とかすんな」



結衣「でも、彼女の前でそういうこと言うかな〜」



八幡「冗談だっての今のは」



結衣「うん、わかってた」



八幡「なにそれ…」





結衣「えへへへ」





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結衣「う〜ん、ホント寒いよ、ヒッキー」ダキ





八幡「あの…引っ付くのは反則ですよ、ガハマさん…」



結衣「ガハマさんて…」



八幡「しかし、高校卒業してもう2年近くになるのか」



結衣「うん、みんな元気にしてるかな」



八幡「今でも連絡とってる奴っていえば」





結衣「ゆきのんだよっ!」



八幡「ああ、そうだったね」



結衣「一番身近なはずなのに…ヒッキーそういうの駄目だよ」



八幡「いや、ほとんど会わないだろ」



結衣「この前会ったばかりだし」



八幡「相変わらず、毒舌で俺の心削って行きましたけどね」



結衣「さっすが、東京の最高学府に合格しただけあるよね」



八幡「あれ、凄すぎだろ…しかも現役…正直、雪ノ下を舐めてた」



結衣「高校3年の猛勉強が効いたんだよ」





八幡「進学校の学年主席だしな」



八幡「雪ノ下以外では…戸塚とも疎遠になってるしな…悲しい」



結衣「ヒッキー、それすっごい微妙…」



八幡「俺たちは同じ大学だが…近くに知り合いいたっけ?」



結衣「近くの大学になら、優美子とかいるじゃん」



八幡「三浦ね…あいつ、葉山と付き合ってるのか?」



結衣「うん、よかったよね。想いが叶ってさ」





八幡「まあ…あーしさん葉山一筋だったしな」



結衣「ま、まあ…あたしもヒッキー一筋だったけど…?」



八幡「な…恥ずかしがりながら言うな…」



結衣「別にいいじゃんっ!」



結衣「あたし達、付き合ってまだ間もないけどさ…」





八幡「おう…」



結衣「あたしは高校の頃から好きだったよ、ヒッキーのこと」



八幡「由比ヶ浜…そ、そっか…」



結衣「うんっ!」





八幡(俺と由比ヶ浜が付き合うとか…高校の俺が知ったら悶えるなきっと)



結衣「ねえ、ヒッキー、この後遊びに行こうよ」



八幡「どこに?」



結衣「飲みに行くとか」



八幡「そうだな…行くか」



結衣「うん」

飲み屋街





結衣「すっかり遅くなっちゃったね…」



八幡「ああ…お前、大丈夫か?この後帰れるか?」



結衣「うん…終電は間に合いそう」



八幡「襲われんなよ…その、由比ヶ浜可愛いし」



結衣「え?何言ってんの…ば、ばか…」



八幡「いや……俺も酔ってるわ…」



結衣「あ〜!お酒のせいにしたっ!ずるい!」



八幡「う、うるせぇよ…」

八幡「それじゃあな、由比ヶ浜」



結衣「うん、ヒッキーもね」



八幡「本当に送って行かなくて大丈夫か?」



結衣「大丈夫だよ、ヒッキーもアパートに帰るなら終電ギリギリじゃん」



八幡「そうだったな」



結衣「襲われそうになったら、携帯鳴らすし」



八幡「警察に連絡しろよ…」



結衣「うそうそ、防犯スプレーあるしね」



八幡「大丈夫そうだな」

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八幡「さてと…俺も帰るか…ん?」



男「なあなあ、姉ちゃん。そんなに辛そうだったら俺が介抱してやるって」



男2「そうそう、なあどっかで休んだほうがいいって」



?「ほっといて…どっか行け…」





八幡「あんま見栄えの良くない光景だな」



八幡「今時あんなことしてる奴いるんだな…由比ヶ浜、大丈夫かな」



八幡(ていうか、なんか見たことある格好だなあの女)





男「いや、ふらふらじゃん?」



?「ほっとけって言ってんでしょ…」



男2「一人なら、俺らの相手してくれてもいいじゃん。介抱してやるし」



八幡(あれ……三浦、か?)



八幡(マジで?見たところ酔いつぶれてるみたいだが…)



八幡(で、絡まれてると…葉山は何してんだよ)





男「な、な?いいだろ?」



男2「名前なんてーの?すげぇ可愛いよな、君」



三浦「いい加減に…」フラフラ





八幡(あれは無理だな…しょうがないか)



八幡「おい、優美子」



三浦「……えっ?」









八幡「こんなとこにいたのかよ、帰るぞ」



男「は?お前の彼女?」



八幡「そうだけど」



三浦「え…ちょ、なに言って…しかもあんた…ヒキオ…?」



三浦「うえ……」



男2「なんだよ男待ちかよ…なんかシラケた」



男「行こうぜ…」スタスタ





八幡「案外わかりやすい奴らで良かったな」



三浦「あんた…ヒキオ…なんでこんなとこにいんのよ…」



三浦「しかも優美子とか…」

三浦「しかもなに?あんたの彼女…とか?キモ…」



八幡「ひでぇ…素通りすんのもあれだしな、助けたつもりなんだけど」



八幡「ああ言えば、収まるかと思ってな」



三浦「だからって…うう……」



八幡「久しぶりだなって…お前、飲み過ぎじゃね?どんだけ飲んだんだよ…」



三浦「ほっといてよ…う…」



八幡「さすがにほっとけるか…由比ヶ浜に怒られる」



三浦「結衣…?あ、あんたそういえば…」

八幡「葉山の奴は?一緒じゃないのか?」



三浦「……あーし」



八幡「……とにかく場所移すか、さっきの奴ら戻ってきてもあれだし」





公園



八幡「おい、飲み物買って来たぞ。水でいいよな」





三浦「……」ゴクゴク



三浦「…ふう…」





八幡「で?葉山の奴は?」



三浦「…」



八幡「そもそも、お前一人なのかよ?」



三浦「……」



八幡「言いたくないんなら、無理に聞かねぇけど…」



三浦「…一緒じゃない…あーし一人だっての」



八幡(ん?なんか重い話のような気が…)



八幡「ふ〜ん、そうか」



三浦「隼人とは…別れたし…この前」



八幡「そういうことかよ」



三浦「…で、あの有り様ってわけ」



八幡「……」





三浦「なんか言えば?高校時代ヒキオのこと見下してた女の恋愛が終わったことに対して…」



八幡「見下してたの?」



三浦「あんたはそう思ってたでしょ」



八幡「別に思ってないが…お前、けっこういい奴じゃなかったか?」



三浦「は?」

八幡(この『は?』ていうの怖いですよ…)



八幡「お前のその状態で帰れないだろ?」



三浦「そもそも終電ないし……」



八幡「しまった…もう、そんな時間か…」



三浦「あんたもないんじゃないの」



八幡「いや、まだ間に合うが…」



三浦「じゃあ行ってよ、あーしもう平気だし」



八幡(平気じゃないだろ〜)



八幡(ここで置いて行くのは、あまりにもな…)





八幡(小町ポイント激減、結衣ポイント激減…)



八幡「…はあ、しょうがない…」

カラオケボックス



三浦「…なんでカラオケ?」



八幡「ここなら、朝まで過ごせるだろ」



八幡「フリータイムなら安いしな」





三浦「ホテル連れ込むのかと思った」



八幡「お前は俺をなんだと思ってんだ」





三浦「……結衣と付き合ってるんだっけ?そういえば」



八幡「なんで知ってんの?」



三浦「結衣から聞いたし」



八幡「まだ2週間くらいだけどな」



三浦「ふ〜ん、ヒキオのどこがいいのかわからないけど…あーしが言えることじゃないか」



八幡「そうだな、今のお前が言っても滑稽なだけだ」





三浦「言ってくれるし…あーしはこれでも1年くらい付き合ってたし?」



八幡「そういえば、高校卒業してすぐじゃないんだな」



三浦「大学が違ったしね…去年の今頃くらいかな」



八幡(この話題広げていいかね?まあ、三浦の方から言ってるしな)



八幡「その…でも、お前ヤケ酒してたんだろ…?」



三浦「…」





八幡「話したくないなら、聞かねぇよ」



三浦「別に劇的な何かがあるわけじゃないんだけどさ…雪ノ下さんのことで」



八幡「雪ノ下?」



三浦「隼人が雪ノ下さんのこと気にする素振り見せてたから…」



三浦「あーしが問い詰めて…直接はそれが原因」

八幡「葉山の奴…」



三浦「でもそれはきっかけで…この1年仮面を被ったみたいな付き合いだった…隼人と」



八幡「そうなのかよ?」



三浦「うん…隼人は素をあーしに見せなかったし…なにしてもうれしそうな顔はするけど…」



三浦「取り繕ってるみたいな…そんな感じ」



三浦「映画見ても、飲みに行っても、エッチしても、買い物に行っても全部…仮面でできてるみたいだった」



八幡「…」

三浦「もしかしたら、隼人の意識は雪ノ下さんに行ってたのかもね」



三浦「で、正式に別れてさ…ちょっと時間が経つと寂しさ込み上げてきて……」



八幡「酒でごまかしてたのかよ」



三浦「そういうこと…」



八幡「そうか…その、なんていうのか」





三浦「いいっての、なんかどうでも。うえ…まだ気持ち悪い…」



八幡「…」



三浦「つーかさ、ここって朝までいれるの?」



八幡「始発までは少なくとも大丈夫だろ」



三浦「そっか」

三浦「色々言いたいこともあるけど、とりあえずちょっと唄う」



八幡「吐くなよ」



三浦「大丈夫…と思う」



八幡「気弱な態度がちょっと不安だ」





明け方



三浦「…」



八幡「…三浦、寝てるか」



八幡(なんか事後みたいだ…もちろん、なにもしてませんけどね?)



八幡(結局それなりに唄ったのかな…疲れて、二人共眠ったけど)



八幡「三浦…そろそろ、始発もあるし帰ろうぜ」



三浦「ん…う〜ん…」



三浦「つーかさ…もう朝…?」



八幡「そうみたいだな」

八幡「なんか疲れ取れてないし…出ようぜ」



三浦「…なにもしてない?」



八幡「してねぇよ…」









三浦「あ〜頭痛い…二日酔いになるかも…」



八幡「飲み過ぎたな、今日はゆっくり寝てろよ」



三浦「講義あるし」



八幡「それは御愁傷さまでした」



三浦「ヒキオにそういうこと言われると、すっごいムカツクんだけど」

八幡「この辺でいいか、じゃあ気を付けてな」



三浦「……あ、あの…」



八幡「ん?なんだよ、まだなんかあんの?」



三浦「…なんでもない、じゃね」



八幡「なんだったんだよ?ま、いいか。帰るか」





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アパート



八幡「う〜寒いな…ホントにそろそろコタツ入れないとな」



八幡「疲れた…今日は暇とはいえ何もする気おきん…」



八幡(昨日色々あってオールナイトしてしまったしな…はあ)



八幡「今日は由比ヶ浜との約束はないけど…まさかな…ははは」



プルルルルル



八幡「嫌な予感が…」



ガチャ



結衣『あ、ヒッキー?大丈夫?』



八幡「電話出ていきなり大丈夫ってなんだ」



結衣『あはは、それもそうだね!あのさ、今日デートしようよ』



八幡「…」



八幡(タイミング悪いなホント……今帰ったばっかりで)



結衣『なにか予定とかあったかな?』



八幡「いや、ないな…わかった行くか」(断るのも悪いしな)



結衣『よかったっ!じゃあ、待ち合わせは…』





駅前



結衣「ヒッキー、こっちこっち!」



八幡「おう…」



結衣「どうしたの?なんか疲れてるみたいだけど」



八幡「大丈夫だっての、昨日眠れなかっただけだ」



結衣「そっか〜、本当に大丈夫?なんなら、今日は無理して付き合ってくれなくても」



八幡「大丈夫だって、由比ヶ浜の顔見たら元気出た」



結衣「へ?も、もう…馬鹿」



八幡「昨日は無事に帰れたんだろ?」



結衣「うん」



八幡「そりゃよかった」(三浦みたいなことにはなってなくてよかったな)

八幡「デートって言ってもどこ行くんだ?」



結衣「マフラーとか見に行こうよっ」



八幡「マフラーねぇ…今あるやつでも十分なんだけどな」



結衣「そうじゃなくて…お、お揃いのやつ買おうよ…」



八幡「え…あ、そういうことか…」



結衣「うん、いいよね?」



八幡「おう、もちろん」



結衣「よかった!じゃあ、早速行こうよっ!」



ガシ



八幡「おい…腕組むなよ…恥ずかしい…」



結衣「えへへ、いいじゃん」



八幡(胸とか当たってますよ…ガハマさん)

ショップ



八幡「こういう柄がいいんじゃね?」



結衣「え〜?こっちの方がいい気がするな」



八幡「やっはろ〜さんにはこっちが…」



結衣「やっはろ〜さんてなんだし!もうその挨拶してないし!」



八幡(あれはあれで可愛かったんだけどな)







カフェ



八幡「とりあえず、飯だな。腹減った」



結衣「お揃いのマフラーも買えたし、特にこの後は考えてないんだよ〜」



八幡「…」



八幡(由比ヶ浜は三浦のことは知らないみたいだな…)



八幡(どうする?昨日のこと話してみるか?)





結衣「あ、そういえばさヒッキー」



八幡「なに?」

結衣「昨日…あれから夜更かししたの?」



八幡「いや…そういうわけじゃないんだけどな」



八幡(由比ヶ浜に心配かけるのもな、三浦もあんな姿してたとは知られたくないか)



八幡「ま、色々あって眠くて疲れただけだよ」



結衣「なんだかはぐらかされた感じ」



八幡「由比ヶ浜が心配することじゃねぇって」



結衣「う〜ん、ならいいんだけど…」



結衣「ヒッキー、なにか心配事とかあったらあたしに相談してね?」



結衣「ヒッキーの力になりたいし」



八幡「お、おう…ありがとな、由比ヶ浜」

八幡「この後、映画でも行くか?」



結衣「そうしよっか!見たいのあったんだ〜」



八幡「どれ?」



結衣「えっと〜、このパンフレットにあったんだけど…これ!」



八幡「…バリバリの恋愛物じゃねぇか…」



結衣「こ、恋人同士で見る物の定番みたいだよ」



八幡「照れながら言うことかよ…こっちも照れるんだけど」



結衣「う、うるさいしっ!」



八幡「まあ、とりあえず見に行くか…」



結衣「う、うん……」

映画館



スタスタ



八幡(おもしろくはあった…あったんだが…)



八幡(大学で恋人になった二人が紆余曲折を経て仲良くなっていく…)



八幡(R指定ギリギリの描写満載の冬の切ない物語でした…)



八幡(なんか俺達の間柄ろ通じるところもあるんですけど…?)



結衣「あ、あははは…なんかすごい映画だったよね…」



八幡「そ、そうだな」



八幡(ほら、気まずいですよ?)





結衣「あ、あたし達もさ…ああいう映画みたいな関係になれたらいいよね!」



八幡「そ、そうだな…まあ、ゆっくり行くって感じか…?」



結衣「い、いきなりはね…えっと…急というか…その」





八幡(男のアパートに行く描写とかもあったりで…ああ、恥ずかしい…)



結衣「晩御飯も食べて行く?」



八幡「そうするか」



結衣「じゃあ、平塚先生御用達のラーメンとかにしようよ」



八幡「ラーメンでいいのか?」



結衣「いいよ」



八幡「じゃあ、それでいくか」





八幡(今日は早く由比ヶ浜から離れた方がいいな…うん。なんか間違いが起きそうだし)





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数日後



八幡(暇だ…)





八幡(今日は由比ヶ浜は友達と遊びにいくらしいからな…)



八幡「で、一人で飲み屋街に来てるんだが…俺って基本ぼっちだったんだな…忘れてた」



八幡「どうしよう、一人で飲んでいくか…?」





三浦「あれ…?もしかしてヒキオ…?」

八幡「三浦かよ…奇遇だな」



三浦「一人でなにやってんの?」



八幡「お前こそ…」



三浦「あーしは一人で飲もうかと思っただけだけど?」



八幡「俺もそうなんだが」



三浦「…」



八幡「…」

居酒屋



三浦「とりあえず、だし巻き玉子かな〜」



八幡「じゃあ、俺は焼き鳥で」



三浦「最近は機械で注文するから楽だよね〜」



八幡「確かに、ちょっと不安だけどな」



三浦「間違って注文しちゃう時が面倒だけどさ」







八幡「とりあえず…乾杯か?」



三浦「何に対してかはわかんないけどさ、乾杯」

八幡「今日もやけ酒のつもりだったのか?」



三浦「もうあんな面倒なのごめんだし?ちょっと飲もうとしただけ」



八幡「ならいいんだけどな」





三浦「ところで、結衣は?一緒じゃないの?」



八幡「あいつは今日、別の友達と遊びに行ってる」



三浦「ああ、振られたのかヒキオ」



八幡「いやいや、女友達とだからな?」





三浦「結衣とはどこまでいってんの?」



八幡「は?どこまでって…」



三浦「あーしも結衣の友達だし?聞いとこうと思って」

八幡「どこまでって…まだ付き合いだして間もないしな…」



三浦「寝てないんだ?」



八幡「まだだよ…悪いか」



三浦「悪くはないけど、まあヘタレなヒキオだもんね。しょうがないか」



八幡「…」



三浦「んじゃ、キスくらいまで?」



八幡「そうだな、そこまでだよ」





三浦「そっか、まだキスまでなんだ…じゃあ、一言いっとくけど」



八幡「?」



三浦「結衣泣かせたりしたら、承知しないから」

八幡「…いきなりだな」



三浦「一応言っとこうと思ってさ、あーし隼人と別れちゃったし…」



三浦「結衣は同じ思いしてほしくないし」



八幡「わかってる、別に泣かせるつもりなんかないっての」



三浦「ならいいけど」









三浦「ぷはっ、やっぱり一杯目は生ビールに限るよね」



八幡「そうなのか…別にこだわったことないが」



八幡「ていうかおっさん発言じゃね、それ?」



三浦「うら若き乙女におっさんとか言うな」



八幡「乙女かよ…」

三浦「そ、身体はもう違うけど?まだまだ乙女だし」



八幡「へいへい、あーしさんは乙女ですよ」



三浦「馬鹿にしてるでしょ、ヒキオ」



八幡「ひい…!相変わらず目つきが怖いっすね…」



三浦「ヒキオ、ビビりすぎ…ったく」ゴクゴク





八幡「…少しは踏ん切りついたのか?」



三浦「へ?どういうことよ」



八幡「いや、葉山とのことだけど…」



三浦「わかんない…まだ、隼人のことは好きだし…そんな簡単に割り切れるものじゃないって」





八幡「そんなもんか」



三浦「そんなもんだっての…でも、ちょっとは落ち着いたかな、この数日で」



八幡「そりゃよかった」



三浦「…あ、あんたの…」





八幡「ん?」



三浦「あんたのおかげも……ちょっとはあるかも…」



八幡「はあ?なに言ってんの?」(なんか三浦が赤くなってるような)



三浦「この前、あんた助けてくれたじゃん?あれもちょっとは関係あるかも…ちょっと」

八幡「あんなん偶然じゃねぇか…気にすんなよ」



三浦「偶然でもさ…あんた、一日あーしに付き合ってくれたし?」



八幡「あ〜あのまま放置したら、目覚め悪すぎだろ…由比ヶ浜も怒るだろうし」



三浦「結衣にはあーしの失態言ってんの?」



八幡「会ったことすら言ってないから安心しろよ」



三浦「そうなんだ、へ〜」



八幡「なんだよ?」



三浦「別に、とにかくあんたに借り作ったままだと気持ち悪いし…」

八幡「なんかしてくれんの?」



三浦「ヒキオと結衣がうまくいくようコーチしてあげる」



八幡「コーチって…彼氏と別れたのに…コーチって」



三浦「なんか言った?」



八幡「いえ…なんでもありません…」



三浦「ふん、どうせ結衣とデートしても洒落た店とか行ってないでしょ?」



八幡「まあ…そうかな…」



三浦「男の方からリードしなきゃダメだっての」



八幡「そんなもんかよ、でも実際どうやるんだ?」



三浦「簡単だって、あーしと疑似デートして教えたげる」



八幡「み、三浦とデート…?いや、それは…」



三浦「疑似デートだっての、なにマジになってんの?きも…」



八幡「別にそこまでしてくれなくてもいいぞ?」



三浦「ま、あーしの気が収まらないし、こういうのでお礼替わりってことで」



八幡「礼なんて必要ないけどな…」



三浦「そういうと思ったけど、他人の厚意は素直に受け取りな」



八幡「…わかったよ」





三浦「ん、じゃあ決まりね」

三浦「じゃあヒキオ、携帯番号教えて」



八幡「番号?交換すんの?」



三浦「うん」



八幡「わかった…」



ピッ





三浦「じゃあこれで、早速明日行くから」



八幡「マジかよ…早すぎるだろ…今日飲んでるのに…」



三浦「早いほうがいいって、それに二日酔いになるくらい飲むつもり?」



八幡「いや…そこまでは飲まんけどさ…」

三浦「じゃあ、いいでしょ。ヒキオなに飲む?」



八幡「スクリュードライバ」



三浦「うわ……あんたこの状況で…引く」



八幡「冗談だよ…冗談」



三浦「結衣以外の女落としてどうすんのよ」





八幡「じゃあ、日本酒とかかね」



三浦「いいじゃん、あーしはマッコリでも飲もうかな〜」



八幡「また渋いのいくな…さすが三浦」



三浦「渋いの?マッコリって」



八幡「いや、わかんねぇけど…」

--------------------------------



三浦「けっこう時間経ったね…」



八幡「おう、そろそろ閉店かな?」



三浦「あんた意外と飲めるし、なんていうか楽しいかも」



八幡「三浦に褒められるとか…なんか変な感じなんだが」



三浦「どういう意味?まあ、いいけど…あ、つまみの残りも〜らい」



八幡「間接キスになるぞ…」



三浦「そんなん気にしてんの?」



八幡「俺がじゃなくて、お前がだぞ…」



三浦「そんなのいちいち気にしてないっての」

三浦「つーわけでヒキオ、明日12時に集合ってことで」



八幡「おう…朝いちばんじゃなくて助かった…」



三浦「遅れたら死なすから」



八幡「怖いっての…」



----------------------------------



アパート



八幡「ただいまーって、誰もいないんだけどね」



八幡「明日、三浦と出掛けるしな…影響でないといいが」



プルルルルルル





八幡「ん?あ…由比ヶ浜か」



八幡「もしもし?」



結衣『あ、ヒッキー、元気〜?』



八幡「まあ、元気だけど…そっちは?」



結衣『あたし今帰ってきたところなんだ〜』



八幡「そっちもずいぶん長く遊んでたんだな」

結衣『ボウリングにカラオケ、超盛り上がったよ〜!』



八幡「そっか、楽しそうでなにより」



結衣「えへへ〜ヒッキーも今度参加する?」



八幡「俺が行っても大丈夫なのか?」



結衣「この前、美奈たちとあったじゃん?あのメンバーだよ」



八幡「そうか…それなら、考えとく」



結衣「でも、彼氏いない子もいるんだから浮気とかしちゃ駄目だよ」



八幡「しないっての…」



結衣「えへへ、うん。信じてるもん、ヒッキー」





八幡「話それだけか?なら、悪い…切ってもいいかな?」



結衣『あれ?ひょっとして体調悪いの?』





八幡「いや…飲みに行ってただけ…」



結衣『誰かと行ってたの?』



八幡「一人で行ったんだよ…」



結衣『そっか…もう、あんまり飲み過ぎちゃ駄目だかんね』



八幡「気を付けてる…一応」



結衣「まあ、ヒッキーお酒強いけどさ…心配だよ」



八幡「由比ヶ浜に苦労かけるようなことはしないって」



結衣「いや…苦労はかけてくれてもいいんだけど…」



八幡「なに言ってんだよ…」



結衣「ひ、ヒッキーのせいじゃんっ!もう…!」

結衣「と、とにかく無理しないようにねっ!」



八幡「おう」



結衣「それじゃね、ヒッキー。お休み」



八幡「お休み」ピッ



八幡「はあ…しまった、嘘ついてしまった…」



八幡「かといって、三浦のこと言うのもあれだしな…ま、大丈夫かな」



八幡「明日昼からだけど…もう寝るか」





次の日



三浦「…」



八幡「おっす、三浦」



三浦「ん、時間通りに来るとかやるじゃん」



八幡「由比ヶ浜にも言われてるからな」



三浦「じゃ、行こ」

八幡「どこに行くんだ?」



三浦「とりあえず、時間も時間だしお昼かな〜」



八幡「昼食の時間か」



三浦「あーしのおすすめの所、紹介してあげる」



八幡「そうか?じゃあ頼む」





洒落たレストラン



八幡「おお…いい感じだな」



三浦「でしょ?やっぱ大学生にもなったら、こういう店の一つや二つ紹介できないとね」



八幡「なんか社会人の上司みたいな発言だな…社会人になったら役立ちそうだ」



三浦「そりゃね、洒落たバーとか紹介できたら、それだけでステータスになるし?」



三浦「そういうところでポイント稼ぐのも重要だって」



八幡「なるほどな」

三浦「あーしらまだ学生だし、値段の方も考慮しないと駄目だけど」



八幡「行きつけの店増やすってのがいいんだな」



三浦「そういうこと」



八幡「ただ、値段考えると寿司屋は難しそうだな…」



三浦「まあ、二人で行っても万単位で飛んで行くしね」



三浦「そういう時はウナギの店とかいいかもよ?値段も数千円だし」



八幡「そこも知ってるのか?」



三浦「今度教えてあげる、結構雰囲気よくてデートにも使いやすいよ」

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三浦「どうだった、ヒキオ?」



八幡「く…すげぇうまかった…」



三浦「でしょ?あそこお気に入りなんだ」



八幡「葉山の紹介なのか?」



三浦「違うっての、あそこはあーしのオリジナル」



三浦「隼人と行った店は…あんまり行きたくないし」



八幡「まあ、そうか…」





三浦「じゃあ、次は服でも見に行くよ」



八幡「お、おう…」



グイ



八幡「おい…手握るなよ…!」



三浦「こっちの方がデートしてる気になるでしょ」



三浦「実際は疑似デートだけど」



八幡「いやいやいや…」

服屋



三浦「ここもあーしのお気に入りの店だし」



八幡「へ〜なんか、すごいな」



三浦「結衣もお洒落だと思うけど、趣味が違うから被らないだろうしね」



八幡「ここも押さえといて損はないか」



三浦「そうね、ちょっと高めだけど。ほら、あんたこれとか似合いそう」



八幡「それか…?1万円越えてる…」



三浦「長持ちするし、おすすめだって」



八幡「う〜む、じゃあ買うかな…」

三浦「あとあんた眼鏡が似合いそう」



八幡「ん?眼鏡?」



チャ



三浦「ほら、けっこういい感じじゃん」



八幡「なにすんだよ…かけるないきなり…」



三浦「伊達眼鏡してみたら?」



八幡「それは必要ない」



三浦「ま、いいけど…」



八幡「三浦はなんか買わないのか?」



三浦「あーしは別にいいや、今日はあんたに色々教えに来たわけだし」





八幡「そうか?じゃあ次はどうするんだ?」



三浦「適当にまわってみよっか、鞄とかあとペットショップも」



八幡「ペットショップ?なんで?」



三浦「結衣けっこうそういうの好きそうだし?」



八幡「いや、まあ犬飼ってるしな…」



三浦「じゃあ、とにかく行ってみよ」グイ



八幡「だから腕引っ張るなっての……」





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ベンチ



八幡「一通りは回ったか…?」



三浦「ま、そうじゃない?はい、コーヒー」



八幡「おう…て、ブラック?」



三浦「なに?まずいっけ?」



八幡「いや、なんでもない…」

三浦「それにしても、ペットショップで動物に襲われる奴初めて見た…あはははっ」



八幡「笑うなよ…あれは店員が悪いんだ…!」



三浦「結局かばんは買わなかったけど、今日だけでもちょっとは見聞広がったでしょ?」



八幡「そうだな…なんか、悪いな、こんなことしてもらって」



三浦「気にしなくていいっての。あーしもあんたに助けられたし」



八幡「だからこの前のは…」



三浦「別にこの前のだけじゃないって」



八幡「え…?」

三浦「高校の時から…考えてみたらあんたに借りばっか作ってた」



八幡「…そうか?」



三浦「うん、あんたは認めないだろうけどさ…あーしは助けられてた気がする」



三浦「結局、なにも返せないまま卒業しちゃったし、そういう意味では恩返しみたいなもんだし」



三浦「ヒキオが気にすることじゃないよ」



八幡「三浦…」



三浦「あ、そうだ。今日で終わりじゃないよ?あんたはまだまだ知っておかなくちゃならないことあるし」



三浦「あと、結衣とのデートがうまく行ったのかも聞かないと駄目だし」



八幡「なんだよそれ…まあ、お手柔らかにお願いします」



三浦「ま、覚悟してなよヒキオ」

数日経過



八幡「よお、由比ヶ浜」



結衣「ヒッキー、待った?」



八幡「今来たところ…んじゃ行くか」



結衣「うん!」





スタスタ





結衣「あ、そうだヒッキー。今日お昼どこで食べよっか?いつものところにする?」



八幡「今日はちょっと行きたいところあんだけど、ダメか?」



結衣「え?どこかあるの?」

洒落たレストラン



結衣「うわ〜〜」



八幡「ど、どうだ…?」



結衣「うん…すっごくいいけど…どこでこんなお店知ったの?」



八幡「い、インターネットで調べたんだよ」



結衣「え、あたしの為に?」



八幡「まあな」



結衣「なんかヒッキーが大人に見える…」



八幡「待て、俺はもう立派な大人だ」



結衣「あはは、でもなんか嬉しい…それに今日は服も違うし」



八幡「え?ああ…これな…」

結衣「いままで見たことないけど、それも新しく買ったの?」



八幡「ま、まあ…こういう店に来るには…それなりの格好が必要だろ?」



結衣「凄い…ヒッキーとは思えない…」







結衣「でさ、昨日ね優美子から連絡あってさ」



八幡「え…ま、マジか…」



結衣「どうしたの、ヒッキー?」



八幡「なんでも…」



結衣「大丈夫だよ、ヒッキーと付き合ってるとは言ってあるけど、他にはなにも言ってなかったし」



八幡「なにも…か?」



結衣「うん、どうかした?」



八幡「いや…別になんでもない…」

八幡(三浦の奴…なにも言ってないのか…てことは葉山と別れたのも言ってないか)



八幡(まあ、あいつと会ってるの、由比ヶ浜に知られたくはない…かな?)



八幡(いや…別にやましいことしてるわけじゃねぇが…由比ヶ浜の為でもあるし)





結衣「ヒッキー、この後どうしよっか?ごはん食べたあと」



八幡「一応デートコースみたいのは作成してある」



結衣「えっ…あ、あたしの為に…?」



八幡「まあ、そういうことだな…」(三浦と行ったところもあるけどな…)





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結衣「えっと…服屋さん行って、ペットショップ行って…ボウリングして、映画見て…」



八幡「ちょっと疲れたな…ごめん、計画に無理があったわ」



結衣「あ、ううんいいよ…!あたしの為にやってくれたんでしょ?」



八幡「そうだけど…」



八幡「デートコースって正直あんまりわからなくてな…」



結衣「あたしもデートコースとかよくわかんないし、そもそもヒッキー以外とデートしたことないし」



結衣「でもさ…なんか、すごいうれしい…」





八幡「由比ヶ浜…」



結衣「…」



チュ



八幡「あ…なな…!」



結衣「えへへ、油断大敵だよヒッキー!」

八幡(いきなりキスしてくるとか…反則ですよ由比ヶ浜さん…)



結衣「ねえ、ヒッキー…」



八幡「な、なんだ…?」



結衣「今日さ…ヒッキーのアパート行ってもいいかな…なんて」



八幡「な……あ、いや…」



結衣「……」



八幡「えっと…ま、また今度な…」





結衣「あ〜〜!ヒッキー、あたし勇気振り絞って言ったのにっ!」



八幡「う、うるさい…いきなりそんなこと言われても…こちらも心の準備が…」



結衣「も〜〜!ヒッキーのバカ〜〜!」





八幡「と、とにかく…こ、今度な…色々準備もいるし…」



結衣「わ、わかった…約束だよ…」



八幡「お、おう」



結衣「うん」



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三浦「で?あーしにそれ聞かせて何がしたいわけ?」



八幡「いや…お前がデートの状況とか教えろって言ったんだろ…」



三浦「そりゃ言ったけどさ……」



八幡「あ、お前が教えてくれた店にも言ったんだが…あいつ喜んでた」



八幡「ありがとな、三浦」



三浦「どういたしまして…」



八幡(?なんか機嫌悪いような…)



三浦「そういやさ、さっきも言ったけど、まだ結衣とはなにもないんでしょ?」



八幡「まあ…なにもないけど…」



三浦「ならいい」



八幡「そうだお前、由比ヶ浜に俺とのこと言ってないみたいだな?」



三浦「あんたも言ってないんでしょ?」



八幡「そりゃ言ってないけど…」



三浦「今言うと、結衣怒るかもよ〜?」



八幡「な、なんで…?」



三浦「こうやって、内緒で会ってるのバレるじゃん?」



八幡「え…そ、それは…」

三浦「結衣にも心配かけるし、あんまり言わない方がいいと思うけど?」



八幡「ま、まあ…そうだな…」



三浦「それでさ、明日別の店行かない?」



八幡「明日…か」



三浦「いいでしょ?」



八幡「いいけどな…予定もないし」



三浦「じゃあ、決まりってことで…」

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八幡「なあ、その別の店ってのは……」



八幡「なんでボウリング場なんだ?」



三浦「いや、今日は単純にヒキオと遊ぼうとおもって」



八幡「え、遊ぶの?」



三浦「いままでも遊びじゃん」



八幡「いや…そうだけど…こういうのはなんかちがうというか…」



三浦「ま、つべこべ言わずに」グイ



八幡「お、おい…マジかよ…」





夕方





八幡「結局カラオケも行ったし…全部俺の奢りで…」



三浦「いいじゃん、楽しかったし」



八幡「まあ、確かに…あ、いや…」



三浦「……」



三浦「ま、いいけど…また誘うから」



八幡「へ?マジで…?」

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居酒屋



八幡「ここの飲み屋もすっかり行き慣れたな…」



三浦「ホントに…しかもヒキオと二人でが全部だし」



八幡「まあ、悪くないけどな」



三浦「あーしも…」



三浦「ていうか、あんたちょっと酔ってる?」



八幡「お前も、人のこと言えないだろ…」





三浦「ねえ、ヒキオ」



八幡「ん〜?」



三浦「あーしらって何回くらいこうして会ってるっけ?」





八幡「…覚えてないな…結構回数は多いと思うが…」



三浦「あんたに助けられた、あの夜ってもう1か月近く前だっけ?」



八幡「そんなになるかな…もうすぐクリスマスだしな」

三浦「クリスマスって、やっぱ結衣と予定あんの?」



八幡「まあ、な」



三浦「…あのさ」



八幡「なんだよ…?」



三浦「結衣とはさ…さすがにもうしてるでしょ?」



八幡「それ前にも聞いたよな…」



三浦「うん、あれから大分経つし」



八幡「まだしてない…」



三浦「ホントに?あんたどんだけヘタレなわけ…?」



八幡「…」

八幡「由比ヶ浜からは誘ってくれてるんだよな…おまけにあんな可愛いし…」



三浦「あんた馬鹿でしょ?それでまだしてないとか…」



八幡「なんでだろうな、俺もよくわからん」



三浦「なにそれ…意味わかんない」



八幡「意味わかんねぇよな…俺も思う」





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公園のベンチ



三浦「ヒキオ〜もう歩けない…ちょっと休も…」



八幡「めずらしく飲んだな、お前…」



三浦「誰のせいだっつの…」



八幡「俺のせいかよ……」





三浦「もうすぐ…クリスマスなんだね…」



八幡「そうだな…」





三浦「…はあ、去年のクリスマスは隼人と過ごしたんだ…」



八幡「そうか、楽しかったのか?」



三浦「あーしはね、幸せだった…あのころは。隼人はどうかわかんないけど」



八幡「そのあとか?葉山と仲が悪くなったの」



三浦「ううん、しばらくはうまくやってた気がする…何か月か経って…だんだんほつれだしたかな…」



八幡「……」



三浦「隼人はやっぱり雪ノ下さんが忘れられてなかってって思う、今なら確信できる」



八幡「いまならって…なんで今なんだよ」



三浦「客観的に見れるようになってきたからかな…」



三浦「今だから…他に大切な人ができて…隼人を少し忘れることができ始めたから…かな」



八幡「お、おい…三浦…」



三浦「あんたと過ごしてる時は…想像以上に楽しかったし…だから…」



三浦「別に他意とかあるわけじゃないんだけど…」





八幡「…嘘つけ」グイ



三浦「え…ひ、ヒキオ…て、ちょ…!」







八幡「ん……」



三浦「むぐ……ひ、ひひお…!」



三浦「ん…む…」



八幡「むぐ…ん…」





八幡「……」



三浦「……ど、どういうつもりよ…」



八幡「酔ってたからってのではだめですか…?」



三浦「駄目に決まってんでしょ…」

八幡「お、お前が思わせぶりなこと言うから…その…つい…」



三浦「なにそれ…じゃあさ、あんたもあーしに思うところあったわけ?」



八幡「あーしさん美人ですもんね」



三浦「真面目に答えて」



八幡「……」







八幡「…あったと思う…」



八幡「由比ヶ浜と寝てないのは…その、お前のことがあったからかも」



三浦「なによそれ…あんたもなんじゃん…!」



三浦「馬鹿じゃない?結衣がいるのにさ…」



八幡「…」





八幡「なんか、ごめん…」



三浦「…わかってる…これ以上いったら、マジでやばいし…」



八幡「そうだな…由比ヶ浜に悪いしな…」



三浦「それもあるけど…あんたのこと諦められなくなる…」



八幡「三浦…お前…」



三浦「いや、でももう遅いかもね…あんたにキスされたし?」



八幡「え?あ、いや…」



三浦「あんたへの気持ちがうなぎ昇りに上がったし…」





八幡「お、おいおい…」

三浦「…もう会わない方がいいよね…」



八幡「三浦…おまえ…」



三浦「結衣を裏切ってるしさ…」



八幡「…俺は……」



三浦「じゃね、ヒキオ…バイバイ」



八幡「三浦…三浦……」





スタスタスタスタ



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アパート



八幡「…はあ、嘘だろ…こんなことが…」



八幡「三浦……俺は…」



プルルルルルル



ピッ



八幡「はい」



結衣『もしもし、ヒッキー?』



八幡「由比ヶ浜、どうした?」



結衣『うん、今度のイブの夜の約束…大丈夫だよね?』



八幡「ん?ああ、18時に駅前だろ?」



結衣『よかった…』



八幡「?」



結衣『あのさ、ヒッキー…ヒッキーさ最近お洒落になってきたよね』



八幡「え…そ、そうか?」



結衣『うん…行くお店とかもすごいところに連れて行ってくれるし…あと、眼鏡したりとか』



八幡「……」



結衣『変わったよね、ヒッキー…最近…』

八幡「変わったか…そうかもな…」



結衣『なんだか、ちょっと遠くに行ったみたいで…家にも呼んでくれないし』



八幡「…」



結衣『イブの夜はちゃんと呼んでくれるよね?あたし泊まるって言ってあるよ?』



八幡「…わかってるよ、大丈夫だ」



結衣『ヒッキー……よかった…』



八幡「心配すんなっての、ちゃんと18時に行くって」



結衣『うん、わかった』

ピッ



八幡「……由比ヶ浜…」



八幡「三浦のことは忘れないとな……あいつに悪い」



八幡「ごめん、由比ヶ浜」



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そして、クリスマスイブの日 17時





八幡「……なにやってんの俺…」



三浦「あーしと会ってるってことでしょ?」



八幡「というか、なんでお前ここにいんのよ…?」



三浦「こっちの台詞だし?あ、あんたと会わないようにしてたのに…」



八幡「本当に会わないようにしてたのかよ…」





三浦「ここって、カップルの待ち合わせ場所によく使われるし?」



三浦「もしかしたら、ヒキオいるかもな〜とは思って通りがかったけど…」



三浦「本当にいたのには驚いたし?」



八幡「…なあ、三浦」



三浦「なによ?」



八幡「雪が肩とかに積もってる状態で言うことじゃないな」



三浦「あ…」



八幡「ったく…もう会わないんじゃなかったのかよ」



三浦「……イブの夜くらい会いたいなって思ったのよ…そんだけ」



八幡「三浦…おまえ…本当になんていうか…」

三浦「あんた18時からの待ち合わせでなんで17時にいんのよ?」



八幡「今日は色々緊張してたんだよ…ほら、イブの夜だからな…あの」



三浦「あーしにそれ言わないでよ……ふん」



八幡「でもま、1時間前に会えてよかったかもな…」



三浦「まあ、この時間なら結衣に見られる心配もないだろうしね」



八幡「そういうことだ…三浦…」ダキ





三浦「ひゃ…!ちょ…ヒキオ…」



八幡「俺も会いたかった…かも」



三浦「…抱き寄せたんなら、はっきり言ってよ馬鹿」



八幡「ごめん」



三浦「あ〜もう、とにかく離れてってば…こんなところ結衣に見られたら…」





結衣「ヒッキー……」



三浦「…へ?」



八幡「あ、由比ヶ浜…?」

八幡「なんで…こんな時間に…?」



結衣「あたしは…緊張してたから…今日は特別な日になるって」



結衣「だから……早く来たんだよ…?」



八幡「俺と同じか」



三浦「……」



結衣「なんだかヒッキーがおかしいとは思ってた……でも、優美子とそんな風になってるなんて思わなかったよ」



八幡「由比ヶ浜…その、あのな…」



結衣「優美子、この間も電話で話したよね?そんな素振り見せなかったよね?」



結衣「電話切ったあと、笑ってたの?」



三浦「そんなわけ…ないじゃん…」



結衣「いつから?いつから…会ってたの?」



八幡「由比ヶ浜、あの…色々勘違いしてることも多いと思うんだが…」



結衣「ヒッキーさ、優美子を抱きしめたのに勘違いもないよね?」



八幡「あ、それは…」



三浦「……」



結衣「いつから…?答えてよ」



三浦「1か月前から、こいつと会ったのは」



結衣「1か月……全然、そんな素振りなかったよ…ヒッキーも…」



結衣「でも、服装とか変わってたからね…そういうことか…優美子の影響なんだ」





三浦「影響っていったら、そうなるかも」



結衣「そうなんだ…ヒッキー」



八幡「おい三浦…!誤解招く言い方すんなよ」



三浦「もう遅いってヒキオ…見られたんだしさ。いま、結衣はすごい疑心暗鬼だと思うよ」



八幡「え……?」



三浦「正直に話すしかないし、正直に話してもどうなるかわかんないけど」



結衣「優美子…それってどういう」



三浦「ごめんなさい、結衣」



結衣「えっ…?」



三浦「あんたの彼氏と浮気まがいのことしちゃったことに対して本当にごめんなさい」



結衣「優美子…」

三浦「多分あんたが一番気になってると思うことについて言うけど…」



三浦「ヒキオとは寝てないから安心して」



結衣「…本当に?そんなの信じられると思う?」



三浦「でも事実だし、これだけは誓ってしてない…まだ」



結衣「まだ……なんだ…」





八幡「由比ヶ浜、その…本当に三浦とはそういう関係にはないってないぞ…」



結衣「…」



三浦「あと聞きたいことたくさんあると思うけどさ…とりあえず場所変えない?」



八幡「そ、そうだな…」



結衣「……」

近くのカフェ



結衣「…」



八幡「…」



三浦「…でさ、話だけど…」



結衣「うん…なにかな?」



三浦「まず、あーし、隼人と別れてさ1か月まえに」



結衣「え…?そうなの……?」



三浦「うん…それで、寂しさ紛らわす為に酒に逃げてた…そしたらさ、変なナンパ連中に絡まれて」



三浦「それで、そこでヒキオに助けられたんだ」



結衣「そうなの?ヒッキー?」



八幡「ああ…」



三浦「そのあと、介抱もしてもらったし…感謝してた」

三浦「その時は感謝して終わったんだけど…そのあと何日かしてこいつに偶然会ってさ」



結衣「二人きりで会ったの?」



八幡「一人で飲みに行こうとした時に…偶然三浦と会ってさ…一緒に飲んだ」



結衣「それもう浮気だよね?ヒッキーはそう思わなかったの?」



八幡「ごめん…今思えばそうかもな…あの時は気にしてなかった…」



三浦「そのあとかな?あーしがヒキオから貰った恩を返す為に、協力してあげるって言ったの」



結衣「協力?」





三浦「あーしのおすすめの店紹介したりとか、服買ったりとか」



結衣「そういうことなんだ…あれ、やっぱり優美子の受け売りなんだ…」



八幡「ああ…言い出しにくくてさ…悪い」

三浦「最初はホントに結衣の為に協力のつもりだったんだけど…そのさ…」



結衣「なに?濁さないでよ」



八幡(こんな由比ヶ浜見たことないな…怖い)



三浦「ヒキオといるのが楽しくなってきて…」



結衣「…優美子…!」



三浦「正直、結衣がこいつ好きになった理由とかなんとなくわかってきた……」



結衣「そんな…なんで…!」



三浦「ごめん…結衣」



結衣「あ、謝るなら…しないでよぉぉ…」ポロポロ





八幡「…」



三浦「…」

結衣「ヒッキーもだよね……」



八幡「由比ヶ浜…?」



結衣「ヒッキーも惹かれていったんでしょ?優美子に…」



八幡「ああ、そうだな…」



結衣「……」ポロポロポロ





三浦「だから…一度もう会わないでおこうってなったんだけど…」



八幡「ああ…」



結衣「じゃあ、なんで今日会ってたの…?」



三浦「ごめん、あーしが約束破った…それだけ…」



八幡「…」

三浦「以上だけど…結衣」



結衣「……あたしに何て言ってほしいのかな?」



三浦「なにって…」



結衣「クリスマスイブの夜だよ…?せっかくヒッキーと過ごすはずだったのに…なんでそんな邪魔するのかな…!」



結衣「優美子っ!信じられないよっ!」



三浦「…ごめん…ホントにごめん…せっかくのイブをさ…」



結衣「ごめんじゃないよっ!…優美子も隼人くんと別れたとか色々あったかもしれないけど…」



結衣「なんで……ヒッキーなのかな…」



八幡「由比ヶ浜……」



結衣「ヒッキーも…なんで、優美子と…」

三浦「結衣…本当に悪いとは思ってるけど…」



結衣「え…?」



三浦「ヒキオが、気持ちがあーしに来てたのは間違いないわけで…」



結衣「な、なに言ってるの?優美子…?」



三浦「そうだよね、ヒキオ?」



八幡「それは…ああ…そうだ」







三浦「じゃあ…あーしと付き合って」



結衣「…え!?」



八幡「み、三浦…?」



三浦「あーし、やっぱりヒキオのこと、諦めきれない」



結衣「優美子!そんな…そんなのって…」



三浦「ごめん結衣…でもこれがあーしの正直な気持ちだから…」





八幡「…」



結衣「優美子…!自分でなにしてるかわかってるよね…!?」



三浦「うん…わかってる…」



三浦「どうせ、あんたたちの疑心暗鬼は消えないでしょ?」



三浦「どうせ、この後もヒキオが何してるか束縛するようになるよ…」



結衣「それは……」





三浦「あーしと結衣の友情もここでおしまい……だったら…」





八幡「おい…三浦…」



三浦「あーしは好きな奴だけでも手に入れたい」





結衣「優美子…!」



三浦「ヒキオ…選んで…あーしと一緒にきて」

八幡(おかしい…なんだこれ?)



八幡(確かに俺達は間違いを犯した…でも、だからって三浦がここまで言うか?)



八幡(高校の時のあの三浦が…面倒見のいいあの三浦がこんなこと言うわけがない…)



三浦「ヒキオ…どうしたの…?」



結衣「ヒッキー…?」



八幡(裏があるのか…?なにか…俺の選択肢でどう変わる…?)



八幡(それに、やけに既視感があるのは気のせいか…?なんか高校の時を思い出してしまう…)



八幡「………そうか」



三浦「ヒキオ?」



八幡「…三浦…」

八幡「ごめん、三浦。お前の告白は聞けない」



三浦「…!」



結衣「ヒッキー…!」





八幡「…俺は…由比ヶ浜を愛してるからだ…お前より…」



三浦「……そう、あーし結局振り回されただけか…」



結衣「優美子…自分で何言ってるかの……?」



三浦「あ〜あ、最悪……じゃあね、お幸せに」スタスタ





八幡「……」



結衣「ヒッキー…」



八幡「ごめんな、由比ヶ浜…その許してくれって言うのはおこがましいけど…」



結衣「そうだね」





パァン



八幡(いて〜〜〜〜!)



結衣「とりあえず、これがヒッキーの罰かな?」



結衣「でも…嬉しかった…あたしを選んでくれて」ポロポロ



結衣「すごい不安だったんだから〜〜〜〜!」



八幡「ごめん、ごめんな…ほんとにごめん…」ギュウ



結衣「で、デートもしっかりするんだからっ!」



八幡「そのあと、俺の家来るのか?」



結衣「あ、当たり前だし…イブなんだよ?」



八幡「わかった、今日は奮発しまくるって」



結衣「うん…!」





八幡(三浦……はあ…あいつは…)

八幡(つまりあいつは…高校の時の俺のやり方を模倣したわけだ)



八幡(自分一人に罪が集中するようにしたんだろう…)



八幡(最初から考えてたのか、それとも途中で思いついたのかはわからんけど)





八幡(あいつはそうすることで、俺達の今後の疑心暗鬼の部分も相当解消してくれた…)



八幡(自分を憎ませて、それで他を軽減した形だな…)



八幡(はあ……初めてわかった気がする…俺のやってきたことが…こんなにも嫌なことだということを…)





八幡(三浦……)

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八幡「て、ことなんだろ?三浦」



三浦『ヒキオあんたさ〜電話大丈夫なわけ?』





八幡「結衣は今いないっての」



三浦『お〜お〜名前で呼ぶようになっちゃってさ…』



八幡「茶化すなよ…これが最後の連絡だしな…」



三浦『やめてよ…あの日、あーしがどんだけ泣いたかわかってる?』



八幡「汚れ役やったのおまえだろ?」



三浦『あんたに振られたから泣いたのよ』



八幡「わかってる…すまん…」



三浦『高校時代のあんた思い出してよかったわ、ほんと』



八幡「いや、よくねぇだろ?」





三浦『あの場なんとかするにはあれしかなかったし?』



三浦『まあ、ヒキオがあーし選んでくれた方が嬉しかったけどさ〜』



八幡「馬鹿…変な事言うな…」



三浦『あはは〜照れてるなヒキオ』



八幡「うるせぇよ…」



三浦『もう、会えないよね…さすがに…』





八幡「お前はまず、結衣と仲直りするところから始めろ」



三浦『それ難易度高すぎ…結衣、着信拒否にしてるし…あーしの番号』



八幡「ま、時間が経ったらいずれ…かな」



三浦『ん、待ってる』



三浦『あとさ、ヒキオ…』



八幡「なんだよ…?」



三浦『結衣と幸せにね』



八幡「わかった、ありがとな……三浦」





おしまい