※ゆっくり書いていきます



※R−18にはならない……と思います。R−15くらいは、あるかも?







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勇者「あれだね、男としては、やっぱそういう憧れ、あるよね」



パラ「元僧侶の身としては否定するべきかもしれないけど、気持ちはわかるよ」



勇者「あれ? パラのいた教会ってそこまで戒律厳しかったっけ?」



パラ「うーん……姦淫は無論禁じてたけど、そこまで厳しくはないかな、普通に結婚できるし」



勇者「ああ、そうだった。覚え違いじゃなかったみたいだ」







パラ「まあ、婚前交渉は禁止してたかな……結婚前まではどちらもバージン推奨だった」



勇者「あー、そういうのもありかな……」



パラ「だとすると、勇者は結婚するまで童貞確定だけど、それでいいの?」



勇者「それは盲点だった」





パラ「しかし、勇者ならこれから武勲を建ててく可能性大でしょ。そしたらモテモテかもよ?」



勇者「すごく実力を要求されることをさらっと言ってくれるなぁ」



勇者「それに……僕の顔って、英雄に相応しいと思う?」



パラ「……大丈夫。後世に残る英雄の肖像画とか、銅像とかは、すごくイケメンにしてくれるから」



勇者「暗に僕の顔面をディスってくれて、どうもありがとう」





――とある村



村長「ゆ、勇者サマ……どうか……どうか娘を、お助けください」



勇者「わかりました、おまかせください」





パラ「いやはや……野盗が誘拐事件とは……こういうのって騎士団の役目じゃないの?」



勇者「しょうがないさ……魔王軍の侵攻に、どこも人手不足なんだよ」



パラ「やれやれ……強大な敵が現れても、人類未だに団結せず……か。救われないね」



勇者「元僧侶の救われない発言か……そういうのって、いいの?」



パラ「いいんだよ……べつに」



勇者「ふーん」





勇者「あ」



パラ「ん? どしたの?」



勇者「あれ……野盗の一員だよね?」



パラ「あー……それっぽいね。いかにも、な感じだ」



勇者「村で聞いた情報にもあて……はまるかな。うん」



勇者「ま、念のために聞いてみよう」





勇者「あの、すみません」



野盗風の男「アァ!? なんだよにいちゃん?」



勇者「…」フッ



野盗風の男「!? 消え……」



勇者「…」(無言の腹パン)



野盗風の男「」ドサッ



勇者「さて……お話するために、声が響かない所に連れて行こう」





勇者「ふむふむ、なるほど……じゃあ、君が娘さんをさらった野盗で間違いないわけだ!」



野盗「へへ……そうだぜ……俺らは今でも勢力を拡大してんだ!」



野盗「いずれはここいらの村を、全部俺たちの支配下にしてやる!」



勇者「うん、なるほどね。じゃあ、もうちょっと君たちの事を教えてくれるかな?」



野盗「へ……いいだろう! イイか、よく聞け、俺たちはなぁ……!」



野盗「(……嘘八百ならべてる隙に……この隠し持ってたナイフで……縄を切って……)」



野盗「(この弱そうなあんちゃんを殺して、裏口から逃げる! 完璧な作戦だぜ!)」



勇者「あ、縄切ろうとしないでね」ズパッ



野盗「……へぁ?」



――ごろん、ごろん



野盗「……!! あああぁああ! 俺の腕がぁああああ!!」





野盗「(や、やろう……いつのまに剣を抜いたんだ……!?)」



勇者「あ、そうそう。嘘疲れても困るから……」ボウ



野盗「(……火炎魔法・小……?)」



勇者「……」スッ



野盗「ぎゃぁああああああ!!!(こ……コイツ……傷口に……!!)」



勇者「今から一つ質問する毎に、一つ傷を作る。そしてそれが嘘じゃないか確かめるために、傷口を焼く」



野盗「!?」



勇者「大丈夫、質問が終えたら痛み、取り除いてあげるからね」ニコ



野盗「う……あ……」ガタガタ





勇者「うん……よし! これで聞きたいことは全部かな」



野盗「ヒュー……ヒュー……(や……やっと……終わった……)」



野盗「(体中が……いてぇよ……呼吸するだけで……痛い……)」



勇者「お疲れ様! 情報提供、どうもありがとう!」



野盗「……お……終わったんなら……はや……く……回復……して……くれ……」



勇者「え? やだよ、そんなこと」



野盗「!?」





野盗「そ……んな……!? 約束が……違う……じゃ……ねえか……!」



勇者「僕が言ったのは、痛みを取り除くってことだけだよ」ゴワッ!



野盗「(!!……火炎魔法・大……い……痛みを取り除くって……そういう事か……!)や……やめ……」



勇者「それに情報を聞き出したから、君はもういらないしね」バシュゥ!



野盗「……! ぎゃぁあああああああああ! あが! あづ! ぁがぁああああああああ!!!」ボォオオオォォォ!



野盗「いやだ! いだあgaだあa!! gAAあがごあ!! あぁAAAAAあああぁ!!!!!」ボォオオオオォォ!





――パチパチパチパチ……



パラ「……終わったのかい?」



勇者「うん、情報はバッチリさ。さあ、娘さんを助けにいこう!」



パラ「……ああ……そうだね」





勇者「……ここが野盗のアジトか……」



パラ「うん……23……いや、24人といったところか」



勇者「ほぼ全員ここにいるんだって……で、彼らは今、遠征と言う名の略奪に向かうため、準備しているみたいだ」



パラ「ふむ……で、どうするんだ」



勇者「もう少ししたら全員が出てくると思うから、そこを一網打尽にしよう」



勇者「パラの風魔法→僕の雷魔法→打ち損じた奴を武器でたたく」



勇者「ヘタに時間をかけて、娘さんを人質に取られても面倒だからね」



パラ「……わかったよ」





野盗の頭「いよーし! 準備はいいか、野郎ども! そろそろ時間だ……繰り出すぞ!」



野盗ども「「「「オオー!!!」」」」



野盗A「お頭! 斥候に出た奴が、まだ1人帰ってきてませんが……」



野盗の頭「なに、1人くらいかまわねぇ! 俺らが」ズパッ



野盗A「……へっ?」





野盗A「な、なんだぁ!? お頭の首が」



――ドゴォーーーーーン!!



野盗A「ぐわぁああああ!! 今度は何だぁ!!! 雷……か……!?」



――プスプス…



野盗A「ひ……! 皆……クロ焦げに……!」



勇者「……」ダッ!



野盗A「!? なんだ、おま」ズパッ



勇者「これで良しと……パラ、そっちはOK」



パラ「ああ……全て殺した」





野盗B「う、動くんじゃねぇ! そこの2人!」



娘「……」



パラ「(! まだいたのか……そして、娘さんを人質に……!)」



パラ「(……そして娘さんは、彼らに暴行を受けていたか……奴らの体液で、ぐちゃぐちゃじゃないか……)」



野盗B「へ、へへ……おとなしくし……がぁ!? あ、あばぁあ!?」パァーーーン!





パラ「野盗が爆ぜた!? これは……勇者、君が!?」



勇者「うん。爆発魔法を凝縮して撃ってみたんだけど……うまくいってよかったよ」



勇者「さて……娘さん、助けにきましたよ」



娘「……」スッ





パラ「! 娘さん、野盗のナイフを……まさか!?」



娘「……」ニコッ



勇者「あ」



娘「」ズパァ



パラ「……自分で……首を掻き切って……!!」



勇者「…………」





――村



村長「そう……でしかたか……娘は……」



パラ「力及ばずに、本当にすみませんでした……」



村長「……いえ……助けていただいたうえで……とてもあなた方を責めるわけにはいきません……」



パラ「思いのほか抵抗が強かったため、野盗は皆殺しにしました……少なくとも、1つの脅威は去りました」



村長「ええ……そう……ですね……」



勇者「…………」







勇者「ねえ、パラ」



パラ「なんだい、勇者?」



勇者「パラは謝ってたけど、もしかして村長さん、俺らのことを責めたかったのかな?」



パラ「そうだね……憤りをぶつける相手は欲しかったかもしれない」



パラ「ただ、彼自身、それが不毛で、失礼なことだ、と思ったんだろうね」



勇者「村長さん、娘さんを助けてほしかったんだよね」



パラ「うん、そうだね」





勇者「娘さんがさ、ナイフを持った時、僕、その気になればナイフをたたき落とせたんだよね」



パラ「……そうか」



勇者「でもさ、娘さん、笑ってたんだよね」



勇者「笑ってるってことは、嬉しいってことでしょ? たぶん、娘さん、望んで死んでいくんだと、僕は思ったんだ」



パラ「……」



勇者「だからやめといたんだけど……もしかして僕、間違っちゃったかなあ?」



パラ「……これは難しい問題だね、私にもこたえられないよ」



勇者「そっかー。パラでもわからないんだね」



パラ「うん、だから勇者。今みたいな質問を、他の人にしてはいけないよ」



勇者「うん、わかったよ」







勇者「おいしいもの、食べたいね」



パラディン「そうだね」





勇者「あれだね、食は命の源って言うしね」



パラ「元僧侶の身としては、食べる前に神に感謝って言わないといけないけど」



パラ「私個人としては、食べ物自身に感謝というのもアリだと思うんだ」



勇者「食べ物に感謝?」





パラ「そう。食べ物は、動物だろうが植物だろうがもとは生き物だろう? 私たちは、それを奪って生きている」



パラ「だから、その命のために感謝を捧げるってことさ」



勇者「おおー、なるほど。その考え方は盲点だったな」



勇者「でもさ、それって食べられる生き物にとっては、大きなお世話じゃない? 殺しといて、感謝だし」



パラ「あー……それは盲点だったね」





――廃村



パラ「うわー、ボッロボロだ……これは、魔物にでも襲われたかな?」



勇者「うーん、人の気配がしない。これは、もう全滅かなぁ」





??「もし……そこのお方……」



勇者「誰?」カチャ



??「剣をお納めください……私は、この村の自警団の戦士……そして数少ない生き残りで」ズパッ





パラ「ちょ! 勇者!?」



勇者「パラディン……構えて。こいつは敵だ」



パラ「え?」



勇者「殺気が隠し切れていなし、人間の血の匂いがぷんぷんする……どう考えたって、まともなやつじゃない」



??「ギ……キキキキ!! ひどいなぁ! いきなり斬るなんてェエええ!!!!」メキメキ



パラ「な……!? 変身していく!? 魔物だったのか!?」





??「魔物とは失敬だなぁ……!! 俺はこの村の学者だった!! 或る時俺はぁああ! 強大な戦闘能力を得る技術を開発した!」



元学者「それは、魔物を取り込みぃ、己が肉体とする技術! 弱い魔物でも100体集めれば、その分だけ強くなれる!!」



元学者「だが、俺の村の奴らは……そんな俺を気味悪がり! 迫害した! だから見せ付けてやってのさ!! この俺の力を!!」



パラ「じゃあ……この村の惨状は、お前が!?」



元学者「そうさぁ……ちなみに、その時、村の奴らも取りこんでやった! 魔物だけでなく……人間を取りこんでも強化可能!! 嬉しい誤算だ、俺天才!!」



勇者「いやぁ……なんというか、キミ、馬鹿なんじゃないの?」





元学者「な! なんだとお!! お前、馬鹿って言ったかぁ!? 知ってんのかお前! 天才に馬鹿っていうやつはなぁ、馬鹿だぞぉおおお!!!!」ブゥン!!



パラ「強化魔法・守全!」パァ



元学者「!? なにぃいいいい!! 受け止めただとォおおおお!!!???」



パラ「風魔法・中」シュバ



元学者「ぐがぎゃあああああああ!!!!」ズパズパズパ





元学者「て、てめええええ」ズパ



元学者「!? ぎゃぁあああああ!!! お、俺の腕がぁああああああ!??!?」



パラ「おお、相変わらず勇者の剣技は冴えてるね」



勇者「いやぁ、それほどでも」



元学者「和んでんじゃねぇええええええええ!!!!!」





勇者「えーと、元学者さん。聞きたいんだけどさ、なんでそんな技術を作りだしたの?」



元学者「決まってんだろぉ! これで力を身につけて! 魔物をバッタバッタとなぎ倒して! それから……それから……??」



元学者「そうだ……俺は……この村の奴らを守って……この村の奴らを見返したくて……」



元学者「なのに……俺は……俺は……!!!!」



勇者「あ、隙あり。雷魔法・中」



元学者「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」バリバリバリ

元学者だったもの「」プスプス…



パラ「うわあ……見事に黒こげ……ねえ、勇者?」



勇者「うん?」



パラ「なんだか改心しそうだったし……もう少し話を聞いてあげてもよかったんじゃないかな?」



勇者「え、そうなの?」



パラ「……いや、危険人物ぽかったし、別にいいか……」





勇者「友や家族と語らい合うって、いいよね」



パラ「ああ、人間の普遍的な望みと言えるね」





勇者「だが、困ったことに僕には肉親とよべる人がいない……」



パラ「……世話になってた、騎士団学校の人たちは?」



勇者「まあ、なんというか……ボッチだったんだよね、僕」





パラ「うーん……そういうことなら、私も同じだなあ。肉親はいなかったから、なるべくして修道女の道に入って行ったわけだし」



勇者「まあ、そういう意味では子供のころから、まともな食い扶持にありつけるだけよかったのかもね」



パラ「ちなみに私もボッチだったよ」



勇者「知ってるよ?」



パラ「……この話は続けると、悲しくなってくるからやめようか」



勇者「そうなの?」





――火山近くの街



勇者「商業が盛んなだけあって広いなぁ、賑わいがある」



パラ「その分、不埒なやつもいるようだけどね。もう3人ほどスリをしようとした奴が……」



勇者「僕なんか、さっきので6人目だよ」



パラ「……まあ、勇者は幼く見えるからね。財布は大丈夫?」



勇者「大丈夫、すろうとした奴の腕を順次叩き折ってるから」



パラ「……少なくとも6人の骨折者が出たのか、自業自得とはいえ……」





少女「きゃ!」ボフッ



勇者「おっと、大丈夫かい?」



少女「は、はい! すみません、ありがとうございます!」タタタッ



パラ「……今の娘、スリってことはないよね? 身なりはそれなりによさそうだったけど……」



勇者「いや、財布は無事だけど……」



パラ「……勇者?」



勇者「パラディン、今の女の子、追いかけるよ」



パラ「え」





――火山ふもとの洞窟



少年「お……来たか!? 手に入ったか?」



少女「うん……あるだけ、薬草持ってきた……」



少年「よーし……これで……元気になってくれよ……」



仔竜「キュウ……キュウ……」







勇者「やっぱりか……」



少年&少女「「!?」」





パラ「……!? アレは……レッドドラゴンの幼生体!?」



勇者「いや、もう成体になりかけてるね。しかも魔王由来の、悪の魔力を吸って……」



少女「あ……街でぶつかったお兄ちゃんと、お姉ちゃん!」



少年「馬鹿! つけられてんじゃねえか! ばれたし!!」



少女「うぅ……ゴメンなさい……」





勇者「2人とも、悪いけどそこどいてくれるかな? その仔竜を殺せないから」



少年&少女「「!?」」



パラ「……ああ、もう。勇者、正直にいっちゃ……」



勇者「悪の魔力を吸っちゃって、そいつはもう手遅れだ。殺さないと……危険だよ?」



少年「だめだ!」



少女「わたしたちの友達を……殺さないで!!」



勇者「……残念だけど……タイムアップだ。雷魔法・小!」



少年「うわあ!」少女「きゃあ!」



パラ「よっと!」



少年「え……あ……お姉さん?」



少女「助けて……くれたの……?」



パラ「いや……むしろ助けたのは勇者の方さ……君たちの後ろにいた、あいつからね……」









―――ギャォオオオオオォ……―――





勇者「むう……成体になる前に仕留め切れなかったか……」



パラ「勇者!」



勇者「パラディン、子供たちは?」



パラ「安全な場所に運んだよ。それに少し眠ってもらった」



勇者「そうか。じゃあ、こいつを倒そうか」



パラ「そうだね」



レッドドラゴン「ギャォオオオオ!!!」ゴゥ



パラ「炎のブレスには……耐熱魔法!」パァ



勇者「はぁ!!」ズパ



レッドドラゴン「ギャオオオオオ!!!」



勇者「うーん……レッドドラゴンだから、僕得意の炎、爆発魔法が効きそうにないのがなぁ……」



パラ「私の風魔法も有効打にはなりそうにない……消費魔力覚悟で、君の雷魔法か、私の聖魔法使ってみる?」



勇者「うーん……相手の耐久次第かな。回復のタイミングが来たら、そこで決めよう」





パラ「回復魔法・中全」



勇者「ふーむ……これはなんとか、物理攻撃で押していけるかな……?」



パラ「じゃあ、魔力は温存して……!? あれは……?」



少女「やめてぇーーー!!」



パラ「しまった! 魔法の効きが悪かったか!?」



勇者「……パラディン、予定変更だ! 全力で仕留める!!」



パラ「……わかった!! 聖魔法・大!!」



勇者「雷魔法・大!!」





少女「あ……ああ……!!」





少女の母「全くこの子は!! あんな危険なことをするなんて!!」



少年の母「あんたら、この街にどんだけ迷惑かけたと思ってんだい? 勇者様がなんとかしてくれたかれら、よかったものの!!」



勇者「……それくらいに、してあげてください」



パラ「……勇者?」



勇者「この子たちは……友達を守ろうとしただけなんです。とても人間らしい……」



勇者「もちろん、危険なことをしたことは、ちゃんと教えないといけませんが、ね?」



少年&少女キッ



勇者「……友達を殺されて、怒ってるんだね。とても人間らしいよ」



パラ「……」





―――――――……………



「お前が新入りか……へへ、孤児上がりなんだって?」



「俺が剣の使い方を教えてやるよ!」









「ぎゃああああああ!! 痛い、痛い!!!」



「やめてくれぇ……もうやめてくれぇ!!!」



「お前たち、何をしている!!」





―――――――……………







―――――――……………



「ふうん、あなたが孤児の? みすぼらしいわね……」



「ほら! あたしの変わりに掃除でもしなさいよ、ありがたく思いなさい!」









「うう……!! ううう……!!」



「な、によ……こ、ここまで、すること、ないでしょう!!」



「な、なにをしているの、おやめなさい!!」





―――――――……………





―――――――……………



「馬鹿ものが……! こんな無駄に剣をふるうなど……!」



「こい、貴様に罰をあたえる!」









「あいつか……若手の中でも指折りの実力者……」



「本当に、容赦ねえ戦い方なんだぜ……すでに、敵対した騎士団員で殺された奴もいるとか……」



「ええ、さすがにそれはねぇだろ!」





―――――――……………





―――――――……………



「貴方の言い分はわかりました……しかし、それだけではいけませんよ?」



「人と人とのかかわり合いは、そんな力だけで解決できるものではないのですよ……」









「……そうですか、教えを守りながらも、武の力を……」



「……そうですね、私にはわかりかねますが……そういうことも、必要なのでしょう」



「いいでしょう、パラディンの転向、認めましょう」





―――――――……………



―――――――……………



「ねえ……君は……? ああ……僕はその、ボッチでね……」



「へえ……君、人間らしいんだね」









「……貴方は……? その……私は……一人で……」



「……貴方……おもしろい考え方しますね……」



―――――――……………

―――――――……………



「宣託は今ここに下された! 魔王を討つため、旅立つのだ、勇者よ!」







「なんで、あいつが勇者なんだ……あんな危険人物が……」



「まあ……少なくとも、強さは折り紙つきだけどよ……」





「……あの子……勇者についていくんですってね……」



「……フン、変わり者通し、お似合いってものよ……」



―――――――……………



勇者「……こうやってさ、旅してきてさ」



パラ「……うん」



勇者「人間らしいって思うことを口にしてみたんだけど……やっぱり、未だに気持ちがよくわからないんだ」



パラ「…………うん」



勇者「人が死んでも、苦しんでも、とくに感情が動くことはない……流石に、自分の危機はどうにかするけど」



パラ「……じゃあさ、もう魔王の前まで旅を続けたのは、なんでだい?」







勇者「まあ……出来たからな。王様に逆らうのも、面倒なことになりそうだし」



勇者「それに……人を救うために戦うのは、勇者らしいでしょ?」



パラ「うん……そうか……」



勇者「あ、そうだ。パラディン、はいこれ」



パラ「これは……ペンダント?」



勇者「とっても貴重な石で出来てるんだって。これ、君に持っていて欲しい」



パラ「うん……ありがとう。そうするよ、勇者……」





―――魔王の間



魔王「よう……よく来たな、勇者」



勇者「はじめまして……かな、魔王。さっそくだけどさ、人間世界への侵攻、やめてくれない?」



魔王「はっはっは……そいつぁ、聞けない提案だな」



勇者「やっぱだめかー」





魔王「逆にさ、俺お前らに提案があるんだわ」



パラ「? 提案?」



魔王「お前らさ……魔族になって、俺の軍門に下らねぇ?」



パラ「な……に……?」



魔王「いや、実際ほとんど姿変わらないんだぜ? 角生えるくらいだぜ?」







魔王「いや……実を言うとお前らのこと監視してたからさ、お前らの会話も聞いてたんだわ」



魔王「なんか……人間の気持ちわからないらしいじゃん? 別段、人間のために戦ってないじゃん?」



魔王「だからさ……俺の手下になれば、その辺の苦悩はなくなると思うぜ?」



魔王「どうよ? 悪い話じゃないと思うぜ?」





勇者「うーん……そうだね、悪い話じゃあ、確かにないかな?」



パラ「……」



魔王「お? 乗り気? やっちゃう?」



勇者「でも……いいや。断るよ」



魔王「……それは……なんでまた? 勇者らしさに、こだわってんの?」



勇者「いや……まあ、それもあるんだけどさ。僕、まだ諦めてないんだよ」



勇者「人間っていろんな考え方しててさ、ひとえに人間らしい考えって、これといってないんだ」



勇者「このとても複雑な人間ってやつをさ……せいぜい、15、6年で諦めるのは、もったいないかなって」





魔王「はへー……オタク、変わった考え方すんのね。……お連れの方も、同じ考え?」



パラ「私は……勇者に従うよ……」



勇者「そうなの?」



魔王「ははは……ま、なんにせよ、交渉決裂ってわけ、か……」



魔王「じゃ……もう語ることはねえな……やると、しますかね!」





勇者「火炎魔法・大!」



魔王「させっかよ! 氷結魔法・大!」



パラ「耐寒魔法!」



魔王「ほう……なら、これならどうだ!」ブオンッ



勇者「っふ!」ガキン



魔王「へえ……俺の鎌を止めるとはね……だが甘ぇ!」バゴンッ



勇者「ぐっ!!」



パラ「勇者!」



魔王「俺の2回攻撃で吹っ飛びな!」



パラ「く……聖魔法・中!」カッ



魔王「ぐおお……やってくれたな! 風魔法・大!」ギュオ!



勇者「……!」



パラ「くぅうう!! ……回復魔法・中全!」パァ…



勇者「ありがと、パラディン……火炎魔法・大!」ゴウゥ!



魔王「ぐお……!!」



パラ「はぁあああ!!」ブゥン!



魔王「ははは! 女だてらに……斧をうまく使うじゃねえか!」バゴンッ!



パラ「く……いまだ、勇者!!」



勇者「はあああああ!!」ギュオ!



魔王「! しま……!!」ズパッ!





魔王「が……は……!!」





パラ「た……倒した……か……?」



勇者「いや……まだだ」



魔王『おうおう……勇者クン、わ禍ってん邪ねえかよ……』ゴゴゴ…



パラ「巨大化していく……!!」



魔王『さあ、御待ち禍ネ! 第2ラウンド、逝くゼェ!!』





魔王『ハハハ覇! 暗黒魔法・大だぁ! テメエらに、耐え羅れるかァ!!?』ドゥ!



勇者「ぐぅ……!!」



パラ「く……勇者! 今回復を……!」



魔王『さ脊ねぇよぉ!!!』ブゥン!



パラ「ああ……!!」



魔王『テ埋エが回復の要と見たぁ!! 先に死んで炉!!』ガオン!



パラ「かっ……!!」





魔王『ヒャ覇ハハ刃ハ! 魔ずは、一匹ィイ!!』



勇者「……」ガキン!



魔王『なンだなん堕ぁ!? 仲間を殺さレテ、怒った禍!!?』



魔王『奈んだよ……テメエ、十二分に人間ら死イ反応する邪ねぇか!!』



魔王『だが夜ぉ……ただの人間に、この魔王サマを討ち取レヤ、死ねェん堕ヨ!!!』ガオン!



勇者「……!!」







魔王『サア……孤れデ、フィ奈ーレだ!!』







パラ「……聖魔法・大!」



魔王『ガァ……!!』ガオン!



魔王『奈……ン堕ト……!! テメエ、生きて……!』



パラ「今だ、勇者!」



勇者「……雷魔法・大!!」







魔王『ガ……偽ガぁアaaAAAAああご御ギャぁああAAあaaAA!!!!!!』





魔王「……ちっくしょ……負けた……か……」



パラ「勇者……あのペンダント……」



勇者「ああ……一度だけ、致命傷を防いでくれる聖石のペンダントさ」



パラ「……それならそうと、しっかり言っておいてくれよ……」



魔王「ふ……はははは! テメエら……最後までそれかよ……まったく……泣けてくるぜ……」



勇者「魔王……」



魔王「へ……まあいいさ。完敗だからしかたねぇ……お前ら、せいぜいがんばれよ……」





勇者「終わった……かな?」



パラ「うん……そうみたいだね」



勇者「じゃ、帰ろうか」



パラ「……魔王じゃないが、君はまったく、相変わらずだね……」



勇者「しかたないさ……僕は、結局この期に及んでも、人間の気持ちがしっかりわからないんだ」



勇者「魔王を倒した昂揚も、なにもない。まだまだわからないことだらけさ……」



パラ「勇者……」





勇者「たださあ……人間の行動パターンはわかってきたんだよね、それなりに観察してたから」



勇者「とりあえず、うちの王様さあ……僕らの懐柔、図ってくるだろうね」



パラ「あー……それはありうるね。魔王を倒した名声と、その力は利用価値があるだろうし」



勇者「へたすりゃ、戦争とかに狩りだされるかもだし……その辺、しっかりお話しとかないと」



パラ「……念のため聞くけど、お話(物理)じゃないよね」



勇者「……場合によっては、あるかもしれない」





パラ「……だったらさ、このまま逃げちゃうって手もあるんじゃない?」



勇者「あー、その手もあるんだけどさ。できれば君、修道所との関係をしっかりしておいた方がいいと思って」



パラ「……え?」



勇者「いや、君、こんな人の気持ちが分からない僕に黙ってついてきてくれたけどさあ……」



勇者「君の故郷のこと、僕全然考えてなかったからさ、ちゃんとしたほうがいいかなって」



パラ「……えー……なんというか……今さらそういうこと言うの?」





勇者「うーん……ダメだった? 僕なりに、必死に考えたんだけど」



パラ「いや……うん、そうだったね、君はそういうヤツだった」



勇者「……なんか、ゴメンね? やっぱり、ちゃんとわかってないみたいで……」



パラ「いいよ……ちなみに、修道所に関しては全く心配いらないよ」



勇者「そうなの?」



パラ「うん。元々ボッチだったし……それに、私が勇者と一緒にいたかったんだからね」





勇者「そうか……うん、わかったよ。ありがとう、パラディン」



パラ「やっぱり、わかってないな……まあ、いいか。今後に期待だね」







―終―