モバP「んなことねーよ! ウチにはお姫様が2人もいるんだかんな! 妻と、娘がな!」



幸子「……ふふーん! カワイイボクの機微をわからない貴方の言う事なんて、信じられませんね!」



幸子「大体、娘さん今年5歳でしょう? だったら、まだ両親に甘えたい盛り……そりゃ慕ってない方がおかしいでしょう!」



モバP「ハッ! 大体、機敏だのなんだの言う前に、少しはトレーニング強化案でもして実力を上げろってんだ!」



幸子「む! な、なんですか! カワイイボクには、そんな……」



モバP「だが、負けたんだろう? この前のフェス」



幸子「う……」





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幸子「あ、アレは……その……」



モバP「幸子よぉ……俺にはわかる。お前は馬鹿じゃねぇ。負ける前は確かに驕っていた……だが、お前は改善点に既に気付いている! そうだろう!?」



幸子「そ、そうです! 歌唱力も……踊り続けるためのスタミナも……まだまだ、足りなかった……!」



モバP「応、ちゃんと意味のある敗北だったわけだ……だが、お前は今、機敏だとかなんだとか理由を付けて、前に進めないでいる!」



幸子「くぅ……!」





モバP「幸子……俺はおめぇを、トップアイドルに足る人材だと確信している……そのカワイイ発言は、決して過言ではないとな」



幸子「そ、そんなことは当然です! 言うまでもなく!」



モバP「だがなぁ……それこそさっきの例を出せば、無条件にカワイさに気付いてくれるのは、基本的に肉親しかいねぇ!」



モバP「あのフェスは、宣伝等の戦略は事前ルールとして差を付ける事が出来なかった……そしておめぇは同じ条件で! 実力で! 他のアイドルに負けた!」



モバP「ファンに……いや! 『輿水幸子』を知らない人に、そのカワイさを届けるには……まだ、てめぇの土台が足りてねぇ!」



幸子「……ぅ……」プルプル





モバP「幸子……おめぇが不安になるのもわかる。なんせ、お前はスタートダッシュがうまく決まった方だからな……躓いたダメージがでかいのもな……」



モバP「だが、ここでお前は実りある挫折をしれたんだ……これはでけぇぜ! 一度折れてから立ち直った人間は、強い!」



モバP「だからよう……ここでいっちょ、もう一度立ってみねぇか? アイドルとして……新生する『輿水幸子』を……俺を含めた皆に、見せつけてやらねぇか?」



幸子「…………やっぱり、わかってない……」ゴシゴシ





モバP「あん? 何がだよ?」



幸子「……プロデューサーさん、まさかそんな調子で娘さんに接してるわけじゃないでしょうね?」



幸子「何と言うか……息子に接しているような感じですよ、今のは……」



モバP「心配すんな! ちゃんと使い分けてる……お前には、この息子式励まし方法が有効と思ったからやっただけだ!」



幸子「息子扱いしないでください! デビュー当初、男の娘疑惑があったの、本気で嫌だったんですからね!」ムキーッ!





幸子「あーもう……なんだか、落ち込んでるのが馬鹿らしくなっちゃいました……ちょうど時間ですし、レッスンに向かいますね!」



幸子「そうです……ボクのカワイさを知らしめるためにも、こんなところで立ち止まってはいられません!」



モバP「応! そのいきだ! 今日からマスタートレーナーさんに頼んどいたからきびしくなるぜぇ! 地獄の特訓メニュー、やり遂げてこい!」



幸子「……え”」



モバP「……カワイさを知らしめるためにも、立ち止まっていられないんだろう?」ニヤリ



幸子「は……諮りましたね! プロデューサーさん!」





モバP「いんや? ちゃんと事前に伝えたぜ? 落ち込んでて聞き逃したんじゃないか?」



幸子「くぅぅぅぅ……!! ああもう、イイですよ! お望み通り、その地獄なんたら、正面突破してやろうじゃないですかコンチクショー!」



マストレ「その言葉を待っていた!!」



幸子「はっ……マスタートレーナーさん!?」



マストレ「プロデューサーから話は聞いた……本来は、もう少し実力を付けた子を見るのだがな……」



幸子「ふふーん! そんな危惧……ボクの成長力で吹き飛ばして差し上げます!」



マストレ「ほう……すっかり心に火がともった様だな……面白い、ついてこい!」



幸子「はい! それじゃあ、行ってきますね! プロデューサーさん! 成長したボクを見て……腰を抜かさないでくださいね!」



モバP「おうさ! 楽しみにしてるぜ、幸子ォ!」





モバP「……いったか……やれやれだぜ……」



ちひろ「……正直、肝が冷えましたよ、プロデューサーさん……」



モバP「おっと、ちひろさん……」



ちひろ「負けて落ち込んでる幸子ちゃんに、あんな強い口調で……彼女、繊細なところがあるのに。やめます、とか言われたら、どうしようかと思いました」



モバP「ははは……すみません。ですが……無理にでも、背中を押してやるべき状況だと思ったんで」



ちひろ「もう……デリカシーが足りませんよ!」



モバP「ははは……! 違いない……! 俺には……どうも、ね……」



ちひろ「……まあ、今回は幸子ちゃんも元気になってくれたようですし……今回は、結果オーライということにしておきます。もうちょっと、言葉に気を付けるようにしてくださいね!」



モバP「ええ……ええ……すみませんね……ちひろさん……」



●数日後





モバP「よう幸子、おはようさん!」



幸子「おはようございます……って、遅いですよ! プロデューサーさん!」



モバP「悪ぃ悪ぃ! ちょいと打ち合わせで手間取ってな……と? そりゃあなんだ? 宿題か?」



幸子「ふふーん! 宿題なんかとっくに終わらせてますよ! これは復習を兼ねた、ノートの清書です」



モバP「ほへー……さっちゃんは真面目だなァ!」



幸子「もっと褒めてくれていいんですよ! ……若干、馬鹿にしたような言い方なのが気になりますが……」



モバP「んなことねーよ! 俺なんか、中学生時代なんぞまともに勉強した事なかったぜ!? お陰で就職には苦労したわ……」



幸子「そういえば……プロデューサーさん、高卒でここに入ったんでしたっけ」



モバP「うんにゃ……正確には大学中退だな。その大学の名前も、たぶん言ってもわからねぇと思うぜ」





モバP「そういや同業者には、秋月っていう高校在籍時からアイドルやって、今は敏腕プロデューサーなんて経歴を持ってる、化け物じみた奴もいるらしいが……」



モバP「残念ながら当時の俺は、天才でも秀才でもなく、加えて努力家でもなくてな……」



モバP「学もなく、まったくのペーペーだった俺がこの事務所に入れたのも、単純に人材不足だったかららしい。人事が整った今じゃ、当時の俺見てぇなやつはたぶん採用しねぇだろうな」



モバP「ま……幸子には釈迦に説法だろうが、勉強はきちんとしといたほうがいいぜ! 絶対将来のためになる……人生の先輩からのアドバイスだ!」



幸子「はいはい……自分語り乙です」



モバP「おぅい!? ちょっと冷たいんでねーの!?」





幸子「ま、ボクがカワイク頑張るのは当然ですが……プロデューサーさんだって、今は立派な人じゃないですか」



幸子「おばあちゃんが言っていました……ちゃんと仕事して、自分の家族を養ってるのなら、それで立派なんですよ!」



幸子「だから、ボクが褒めてあげますよ! だから、もっとカワイイボクのために頑張ってくださいね!」ドヤァ…



モバP「…………」



幸子「な、なんですか!? 急に黙らないでくださいよ……」



モバP「……いやー、正直『カワイイボクの旦那様になるなら、高学歴、高身長はもちろん、年収2千万以上は当然ですね!』くらいのセリフは出てくるかなー、と覚悟してたんで……」



幸子「なんですかそれぇええ!? イメージ悪過ぎでしょうが!?」





モバP「はいはい……っと、さて冗談はこれくらいにして、次のライブの打ち合わせをはじめっか」



幸子「ちょっとぉ! スルーしないでくださいよ!?」



モバP「しかし……まだまだ難航してんだよな……今度のライブは、資金が多く使えてパフォーマンスにも制限がねぇ分、中々決めきれねェ……」



幸子「あ、スルー確定なんですね、もういいです……しかし、そんなの悩む必要なんてないでしょう?」



モバP「んぇ? ナンデ?」



幸子「ボクのカワイさを前面に押し出せば、何の問題もありません!」ドヤァ…



モバP「だから、その方法を考えてんだよ……」





幸子「ふふーん! まったくプロデューサーさんはダメダメですね! こんな天使が目の前にいるのに……」



幸子「それこそ、天使が空から舞い降りるくらいの、トップクラスにカワイイ演出が必要ですね!」ドヤァ…



モバP「まったく、簡単に言ってくれるぜ……いや……待てよ……? 舞い降りる、か……ありかも知れねェ!」ニヤッ



幸子「!!(プ……プロデューサーさんが悪い笑顔をしているッ! 一目でわかる……ロクでもないことを考えているとッ……!)」



幸子「(……もしかして……ボクの発言は……ウカツだったのでしょうか……?!)」



●ライブ当日



――バラバラバラバラ……



幸子「…………」



モバP「よしっと! 準備万端だな、幸子」



幸子「プロデューサーさん……確かにボクは……天使なので、空から舞い降りる、だなんて口走ってしまいました……」



モバP「いやー……昔取った杵柄ってやつだな! スカイダイビングのライセンスを持ってた事が、こんな形で訳にたつとは……」



幸子「だからってねぇえ!! 本当に言葉通り、空から舞い降りる企画を考えるなんて、貴方はアホなんですかぁああ!!」



●ライブ当日



――バラバラバラバラ……



幸子「…………」



モバP「よしっと! 準備万端だな、幸子」



幸子「プロデューサーさん……確かにボクは……天使なので、空から舞い降りる、だなんて口走ってしまいました……」



モバP「いやー……昔取った杵柄ってやつだな! スカイダイビングのライセンスを持ってた事が、こんな形で役に立つとは……」



幸子「だからってねぇえ!! 本当に言葉通り、空から舞い降りる企画を考えるなんて、貴方はアホなんですかぁああ!!」



あかん……またしても……

34は無視でお願いします……



モバP「いやぁ、苦労したぜ……幸子のカワイさを前面に押し出すための企画、費用の捻出、安全性の確保、その全てを万全にするのは……」



幸子「努力の方向音痴すぎますよ、プロデューサーさん……」



モバP「だが、これが決まれば大インパクト間違いないし……協力者全てに感謝だな!」



幸子「ボクとしては、この企画にOKを出した全ての人に腹パンでもお見舞いしてやりたいです」



モバP「……幸子……」



幸子「……なんです?」



モバP「……グッドラック!」グッ b



幸子「さわやかにサムズアップしてんじゃねーよコンチクショー!!」





モバP「……いいか、幸子。このフライトは、新しい技術によって安全性はこれまでとは段違いに上がっている……」



モバP「だが、なめてかかれば命がないのは、かわらねぇ……いいか、手筈通りにやるんだぞ」



モバP「途中までは俺も一緒に飛ぶが……一定の高度にまで到達したら、すぐにパラシュートを開け! 後は自動的にステージまで到達するからな!」



幸子「あーもー……もう何を言っても無駄なのは良くわかりました……こーなったら、やってやろうじゃないですか!」



モバP「よっしゃあ! 気合は十分だな……行くぜ幸子ォ!」



幸子「え……あ……ちょ……まだ心の準備が……」



モバP「ウィーキャンフラーイ! イヤッホォォォォオオオオオオウ!!!!」



幸子「ちょまぁあああ!! フギャーーーァアアアアァアァァアアアア!!!!」



……うーむ、どうにもあかん……

一旦区切ります、すみません……



●ライブ後



モバP「応! 幸子……見てだぜ、大成功だったな! 引っ掛かっちまったのはちょっと残念だったが……」



幸子「…………」ポスッ



モバP「んぇ? なんだいきなり……!」ボズッ!



モバP「んぐ……何いきなり、腹パンしてくれてんだ……?」



幸子「…………!」プルプル



幸子「バカ……プリョデューサーしゃんのバガ! こ……怖かったん……でずがらね……」グズグズ



モバP「……すまねぇ、悪ぃ、許せ……」ポンポン



幸子「……頭ぽんぽんだけじゃ、いやでず……もっと優しく撫でてください……」



モバP「ああ……おめぇはよくやったよ……怪我もなく、なによりだ……良く頑張ったな、幸子……」ナデナデ



●数日後



幸子「ふふーん! カワイイボクとデートできるだなんて、プロデューサーさんは幸せモノですね!」



モバP「……こりゃあ、遊びに来たわけじゃなくて、一応次のイベントのための下見なんだがなぁ……」



幸子「でも、実際に遊んでみてもいいんでしょう? 名目上は、オフ返上の仕事ってことなんだから楽しまないと損です!」



幸子「それにプロデューサーさん……他に言うことはないんですか?」



モバP「?」



幸子「もう! 今日はセクシーにオシャレしてきたのに……本当にダメダメですね! そんなんじゃ奥さんも愛想つかしちゃいますよ!」



モバP「……ハハッ、セクシーとか、10年はええよ!」



幸子「なんですか、その言い草!……あ、わかりました! ボクのセクシーさにも気付いてたけど、言えなかったんですね! 奥さんに操を立てるとは……プロデューサーさんは愛妻家ですね! ……それとも恐妻家?」



モバP「……いってろ! ほら……いくぞ!!」





幸子「ほらほら、プロデューサーさん! 次は絶叫マシンに乗りますよ!」



モバP「はいはい……まーったく、元気なモンだねぇ……」



幸子「おお……意外に空いてますね……すぐに乗れそうです!」



モバP「そりゃあいい、俺は面倒が嫌いなんだ……(ん? なんだあのカッパみたいなの……?)」



●絶叫マシーン搭乗、発進後



幸子「……プロデューサーさん、さっきからチラチラボクを見て、何を気にしてるんです?」



モバP「……なあ、幸子。もうお前も気付いてるんだろ?」



幸子「……ええ……ボク達の後ろのお客さん、レインコートみたいなの着てますね……」



モバP「……もしかして……このマシーンって……水がかかるタイプのやつじゃあ……」



幸子「……でも、今さら気付いても、遅いですよおおおお!! フギャー!」バシャーン!!



幸子&モバP「「ガボゴボガボゴボボ!!」」



●絶叫マシーン



幸子「…………」ビチャビチャ



モバP「…………」ビチャビチャ



幸子「……なんで、気がつかなかったんですか! 聞いたら、レインコートが備え付けてあるのを、見つけてたみたいなのに!」



モバP「幸子てめぇ! 俺にそんな察しの良さを求めてんのか!?」



幸子「それ言われると反論できませんね!」



モバP「だろう?!」



幸子「…………プッ! ハハハハハ!! あーもう……2人してびしょ濡れになって何やってんだか……」



幸子「まあ……今回の事は、サプライズの演出ってことにしといてあげます! ハ……クシュン!」



モバP「おっと……流石にそれじゃあ、風邪引くな……俺の上着を……と思ったが、俺も濡れてるんだった……」



幸子「というか、なんか不慣れっぽいですけど、プロデューサーさんは家族をこういう所に連れてきた事がないんですか? だめですよ、家族サービスも考えてあげないと……」



モバP「……ともかく、このままじゃ2人とも風邪ひきかねん。スタッフさんに聞いて、どうにかなるか……」



幸子「……プロデューサーさん……?」



●さらに数日後



幸子「(……あの遊園地の下見の時、明らかにプロデューサーさん、話を逸らしたましたよね……)」



幸子「(もしかして……仕事にかまけて、家庭がうまくいってないとか……)」



幸子「(それならいけませんね……おやすみを上げれるよう、ボクからちひろさんに相談してみましょうか……)」



幸子「……おや、手帳が落ちてる……って、これプロデューサーさんの……」



幸子「……今日はプロデューサーさん、もう営業に出かけちゃってるんでしたっけ。まったく、何をやってるんだか……」



幸子「ちひろさんに、相談がてら届けておきますか……」スッ……バサァ!



幸子「! しまった……挟んであった紙がバラバラに……もー、ボクなにやってんだか……ん?」



幸子「…………そういう……ことだったんですか……プロデューサーさん……」



●さらに数ヵ月後



モバP「……うし……今年も、ちゃんとこの日に休みを取れてよかったぜ……」



モバP「っと……途中で花屋によらねーと……」ピンポーン



モバP「はいはーいっと……やれやれ、出かける前の来訪者とは……」



モバP「新聞なら間に合ってますよー……って、幸子!? なんでここに! それに……それ、花束?」



幸子「……すみません。プロデューサーさん……手帳を落とした事があったでしょう? あの時、ボクがそれを拾ったんですが……その時、中身を見てしまったんです」



モバP「……そうか、そう言う訳か。で……今日花束を持って訪ねてきたってことは……」



幸子「はい……奥さんと、娘さんへの……弔いの花です」



モバP「……俺は今から、墓参りにいくんだが……」



幸子「……一緒に行っても、いいですか? 差し出がましいかもしれませんが……」



モバP「ここまで来といて、今更何言ってんだよ……いいぜ、付いて来な」





モバP「アイツとは高校時代から交際しててなあ……金銭的な余裕がなくなって、大学辞めざる負えなくなり、不貞腐れてた俺を……叱咤してくれたもんさ……」



モバP「就職先が決まって、子供も出来て……俺が、夫と親父ってやつをやれるんだなァ、って思ってた矢先のことだった……」



モバP「今は設備が整ってて……滅多にはそんなことはないんだが……やっぱ、女性が子供産むのは、命がけなんだよな……」



モバP「起きちゃいけねぇ不幸が……そん時に、一気に来やがったんだ……」



幸子「…………」



モバP「ついたぜ……ここだ……」





モバP「……ずいぶんと久々だぜ……仕事仕事だからな……命日だけは、どうにか休みとれるようにしてるがな……」



幸子「プロデューサーさん……もしかして……ボクのことを、死んだ娘さんのように思ってたんですか?」



モバP「あん? いきなり何言ってんだよ?」



幸子「その……奥さんや娘さんが生きてるかのように、今まで話してましたし……」



幸子「あの……結構前ですけど……ボクがフェスで負けた時、息子流励ましなんて言ってましたし……その……」



モバP「はッ! 馬鹿言え! おめーなんざ、俺の妻や娘なんぞと、全然違うね!」



幸子「な! なんですかその言い方……!」



モバP「お前は『輿水幸子』……世界一カワイイ、俺の担当アイドルだろうが! 同一視なんて、妻にも娘にも……何よりお前に失礼な事、とてもじゃねーが、出来ねーよ、バカが」



幸子「! プロデューサーさん……」





モバP「まあ……正直、子供がいたらこんな感じかな、という感想は抱いたことがあるぜ……お前と一緒にいたらな……」



モバP「俺の趣味のスカイダイビングを仕事に入れてみたりしてさ……その辺は、確かに同一視してんじゃねーか、と言われたら、強く返せる言葉はねーな……」



モバP「……指輪も付けたままで、妻や娘がいるみたいに話してたのは……女ばっかの職場で、安心感を持ってもらう意味もあったが……」



モバP「……そうなんだよな……アイツらは……死んでんだよな……もう、いないんだよな……」



幸子「……プロデューサーさん!!」





モバP「なんだよ……そんな大きい声ださんでも、聞こえてるぜ?」



幸子「プロデューサーさんは……ボクといなきゃダメです! ボクを一番にカワイイって言ってくれればいいんです!」



モバP「……幸子?」



幸子「あ……ええと……その……奥さんと娘さんの事を忘れろって言ってるわけじゃなくて……その……」



幸子「ボ、ボクと一緒にいてください! ボクが頑張って、プロデューサーさんをトップアイドルのプロデューサーさんにして上げます!」



幸子「そしたら、奥さんと娘さんにも、きっと誇れる事です……だから……だから……」



モバP「幸子……すまねぇな……気を、遣わせたか……?」



幸子「……そんな、事……」



モバP「でもなぁ……幸子、お前……そんな事いうんじゃねぇよ……! お前は、お前自身のために頑張りゃいいんだ……!」



幸子「……プロデューサーさん……?」



モバP「それに……お前に、そんな風に、いわれるとさぁ……俺……どうしたら、いいか……わからなくなっちまうよ……ッ!」ポロポロ





幸子「(プロデューサーさんは……右手で顔を押さえて……泣きはじめました……)」



幸子「(そんなプロデューサーさんを見たのは初めてで……どうしたらいいのか分からなくなってしまって……ボクはしばらく、そのまま突っ立っていました……)」



幸子「(ふと……プロデューサーさんの、所在なさげな左手を見て……気が付いたら、ボクはその手を握っていました……)」



幸子「(その時……なんとなくですが、奥さんと娘さんが死んでから、プロデューサーさんは、ちゃんと泣いてなかったんじゃないかな、と思ったんです)」



幸子「(ボクがやったことは、良い事かどうか、わかりませんが……ちゃんと泣けたのは、たぶん良いことだった。そう思っているんです……)」





モバP「ち……すまんな、醜態を曝した。年をとると、どうもいけねぇ」ズビッ



幸子「いえ……そんなこと……」



モバP「……うっし、掃除も完了だな!」



幸子「……綺麗になりましたね、お墓」



モバP「ああ……幸子の買って来てくれた花束も立派なもんだ……後は……お祈りだな」



幸子「……はい」





幸子「(……プロデューサーさんの奥さん、娘さん……プロデューサーさんは、立派に仕事をしてくれてます……)」



幸子「(時々、変な方向に張り切りますけどね! まったく……カワイイボクに対して、もっとお姫様扱いしてくれてもいいのに……)」



幸子「(……でも、奥さんが好きになったのも、よくわかります。言葉づかいが乱暴、ちょっと不器用で抜けてる所もあるけど……優しくて、温かい……)」



幸子「(ですから……安心してください。プロデューサーさんにはボクがついています……!)」



幸子「(それに、プロデューサーさんには、ボクが……ボクが……? ……!? ボ、ボク、今何考えて……!!///)」





モバP「………」スクッ



ビクッ! 幸子「プ、プロデューサーさん……?」



モバP「……よし、終わりだ。行くか」



幸子「あ、待って下さいよ! プロデューサーさん! もう……いいんですか?」



モバP「いいんだよ、墓参りなんてこんなもんだ」



幸子「……さっきまでピーピー泣いてたくせに……」



モバP「てめぇ!」



幸子「ふっふーん! 黙っててほしいなら、この後ご飯でも驕ってくださいね!」



モバP「チクショー! まあイイぜ、かまわん! 飯食いに行くぞ、幸子ォ!」



幸子「はい! しっかりとエスコートしてくださいね、プロデューサーさん!」





―終―